米国のプロモーションは「ストーリー」重視

前回の記事では、米国は人種の多様性から口コミやPRを重視することをお伝えしました。日本では良いものを作れば広まるという考え方がまだ根強いですが、米国は伝えなければ埋もれてしまうのです。

その状況はプロモーションにおいても色濃く反映されています。日本のように機能性や品質訴求ではなく、ストーリーやそのわかりやすさを重視する米国の事例をいくつか見ていきます。

伝えたいのは価値観

例えば米国で大きくシェアを伸ばしているKIND SNACKS。チョコレートバーであり、日本でいうとSOYJOYやカロリーメイトのような健康補助食品のような位置づけでしょうか。

彼らはこれまで、“チョコレートバーは美味しいが体に良くない”、“健康食品は体にいいが美味しくない”といった米国における評判の中で、「美味しいけれども体にいい」というポジショニングで製品を提供しています。

日本の企業とプロモーションが異なるのは、その機能性や素材のみを訴求するのではなく、ブランドの価値観(KINDであることを大事にしていることや、Healthyなライフスタイルなど)を強く訴求していることです。そして、SNSなどを活用しながら、常にメッセージを発信しつづけています。

KIND Snacks サイト / KIND Snacks facebook / KIND Snacks Instagram

一方、ある日本の食品は、素材や開発の経緯、そしてなんと賞味期限まで、機能的な情報を多くウェブサイトに掲載しています。また、FacebookやInstagramを利用していません。まだまだ日本ではマスマーケティングの効果や重要度が高い、というのも理由だと考えられますが、プロモーション戦略に大きな違いがあるのは明らかです。

法人向け事業を主とするGEもまた、価値観の発信に余念がありません。CMOのLinda Boff氏は、マーケティングを行う際には、「Who we are」を最も大事にしていると語ります。そして大切にしているのは、Value & Innovationであると。

採用向けも含めて、GEでは多数の動画をYouTubeにアップロードし、SNSなどで拡散しています。こうしたコンシューマ向けビジネスではない企業でさえ、多数のSNSを運用していることに驚かされます。

GE Youtube Channel / GE facebook / GE twitter / GE instagram

また、消費財メーカーのDoveは、6,700万回もの再生回数となった大ヒットした動画を制作しました。商品は一切でてきません。

メッセージは、「あなたは、あなたが思っているよりも美しい」というもの。本人と他者が自分に対して持っている印象の違いをスケッチを通して表現しています。間接的にDoveが大切にしている価値観を伝えているのです。

マスマーケティングとは異なり、かけた費用の分だけリーチできるのではなく、それ以上の効果を得られるのはSNSならではです。こうしたイメージ戦略とも取れる手法を米国の企業は多用しています。

ブランディング・エージェンシー、PR会社の重要性

企業としての価値観や大切にしているミッションをプロモーション活動に反映していくにあたり、米国ではブランディング・エージェンシーがその役割を担うことも多いようです。(日本では広告代理店が主に機能しますね。)

彼らは、広告の出し先(テレビのCM枠など)のみに重きを置くのではなく、何を伝えるのかを考え抜き、SNSを含めたマルチチャネルでブランディングを行っていくという手法を取ります。

また米国では「メディアにどう扱ってもらうか」という観点も重視しており、PRを専門とする会社が多数存在します。彼らは業界ごとにコネクションがあり、良いPR会社かどうかは、そのコネクションの数で決まると言われています。例えば、服飾メーカーのPRを行う場合、どれだけのメディアにおいて、その服飾メーカーの商品を出演者に着せることができるか、PR会社の手腕で決まるそうです。

機能や性能で差別化できない商品においては、ブランディングやそれに伴うストーリーこそが差別化要因になると考えています。日本においては、まだまだブランディングやPRに予算を組むことが一般的ではなく、一部の企業に限定されているように感じますが、そこに注力した企業こそが、ユーザーの心を掴み、売上を伸ばしていくのかもしれません。