ウェブメディアにおけるAIの活用事例

総務省の情報通信白書では、AIがサービスに果たす機能として、「識別」「予測」「実行」という大きく3種類あるとしています。

また、識別対象としては音声、画像、動画、言語があげられています。

総務省 | ひろがる人工知能(AI)利活用

AIのインプットとしての言語情報

新聞や雑誌などのウェブメディアは、膨大な言語情報を保持しています。それらの企業が持つデータをAIのインプットとして活用することで、AIが文章を理解し問いに答える、ということが期待されています。まさにこうしたウェブメディアもデータホルダーであると言えるでしょう。

例えば、Googleが買収し、囲碁の世界チャンピオンに勝ったAlpha GOを開発したディープマインド社は、CNNやDaily Mailというメディアの情報をAIの学習に活用しています。

MIT Technology Review | Google DeepMind Teaches Artificial Intelligence Machines to Read

AIの活用には、情報そのものと、その情報の解釈が必要であり、記者が作成した記事の注釈や記事前段の箇条書きのサマリーをインプットとすることでAIを学習させるそうです。

メディア内におけるAIの構築と活用

New York Timesは自社内でもう一歩踏み込んだ取りをしています。彼らは、AIの学習にはコンピュータが独自で行うアプローチと、人間が補足しながら学習させるアプローチがあると言っています。前者は可能性を秘めているものの、まだまだ十分なものとして自立したものになっておらず、後者は業務負荷が掛かりすぎるという問題を抱えていると言います。

そこでEditorというツールを開発し、コンピュータが学習しながらも、編集業務の流れの中で、人がAIの学習インプットを行うというアプローチを取っています。

NEW YORK TIMES LAB | EDITOR (2015)

このツールによって、記者の編集作業がそのまま機械学習のインプットとなり、一方で、ツールがタグの自動修正や注釈の提示など、業務負荷を下げるサポートを行うそうです。これまで記事単位でしか設定されていなかったタグが段落単位で設定され、複数の記事の一部の段落を構造化して組み合わせ、記事作成のサポートをするなど、これまでは出来なかったCMS機能の強化につながる可能性があります。

広告事業への活用

別の事例として広告への活用があります。コンデナストでは、ユーザーの行動履歴と購買履歴を組み合わせて、キャンペーンを最適化するというソリューションを提供しています。

Conde Nast | Spire

オーディエンスデータ(属性情報など)と行動履歴、そしてレコメンデーションを行うというソリューションそのものはアドテクとしてすでに広まっているものですが、コンデナストが持つ、例えばライフスタイル系の記事情報を付加できることが、他とは異なる優位性となりそうです。

他業種への展開

最後に日本の事例を紹介します。日本経済新聞社は2016年12月に、AIを活用した対話型応答エンジンを発表しました。

日本経済新聞社 | 日経Deep Ocean

このサービスの特徴は、記事情報をAIのインプット情報とするだけでなく、経済・金融分野の質問に対して自動応答する、といった実用性を備えているところです。例えば証券会社の営業サポートツールとして、「為替と株価の相関を教えて」といった顧客からの質問に答える、といった利用ができます。

現時点でどれだけの精度かは不明ですが、Financial Timesも有する日本のメディアが、世界に先駆けてこういった取り組みを行っていることは素晴らしいと思います。引き続き注目していきたいです。