広告代理店のビジネスモデルと、その変化

企業のマーケティングに「インターネット広告」を利用することが当たり前となった昨今では、広告代理店にその運用を依頼された経験がある方も多いのではないでしょうか。

一般的に、広告代理店のマージンは15%前後と言われています。これは従来のマス広告においても、インターネット広告においても、変わりません。

広告「代理」店と呼ばれるということは、何かを代理した結果としてマージンを取っているわけですが、一体何を代理しているのでしょうか。まずは歴史的背景を紐解いてみました。

広告代理店の成り立ち

現存する日本最古の広告代理店である廣告社は、毎日新聞(旧東京横浜毎日新聞)の広告取次業として1888年に創業しました。つまり、広告主の宣伝業務を代理するのではなく、媒体社の広告枠販売を代理するのが、広告代理店の役割でした。

出典|広告界の黎明期(ムサシノ広告社)

このビジネスモデルでは、限られた広告枠を広告代理店が抑えることで、有利な価格で広告主に販売できる状況を生み出すことができました。

日本の大手広告代理店のこれまでの成功モデルとは、マス媒体の広告枠(ラジオやテレビの広告時間、新聞や雑誌の広告スペース)を引き受け、それを広告主に売るというものであり、有限な広告枠を寡占的に押さえて高値で販売するところに強みがあった。特に高度成長期以降は、広告主の需要が比較的強い状態が続き、それに対して広告枠はあまり増えないという構造にあったため、広告単価を高く維持できてきた。広告代理店はコミッションとして広告枠販売料金の15-20%を得るという体系をとっており、広告料金を高止まりさせれば自社も儲かるという構造にあった。

出典|広告メディア業界の統合と進化(Strategy&)

その後、広告代理店の業務は、広告枠の販売から、枠を売るための付加サービス(コピーライティング、CM制作、マーケティング調査、連動イベント…)へと領域を広げていきました。今日では、広告枠の購入だけではなく、上記付加サービスに対する報酬という感覚で、広告代理店と取引している広告主が多いのではないでしょうか。

インターネット広告における、業務と報酬制度のズレ

インターネット広告においては、純広告などの予約型広告を除き、広告枠の販売には市場原理が働きます。また、有力な媒体はあれど、数に限りはないため、寡占が発生することはありません。そのため、広告代理店が媒体社の広告枠販売を代理する(=広告主が広告代理店経由で広告枠を購入する)ビジネスモデルは成り立ちにくいと思われます。

一方で、広告主側の人材・スキル不足が原因となり、インターネット広告を自社で運用できずにインターネットを専門とする広告代理店に運用を丸投げしているケースを多々見受けます。

この場合、広告代理店は広告主の運用を代理しているので、本来であれば広告枠の購入費用とは別に、運用に対する費用を支払う、所謂「フィー型」の報酬制度が正常であると考えられます。しかしながら、従来の慣習のまま、広告代理店は広告費からマージンを得ており、実態と報酬制度がかみ合っていないのが現状です。

海外では、どのような報酬制度なのか

欧米では、日本とは正反対の「クライアントの代理として広告枠を買う」というスタンスで業務を行っています。このため「一業種一社」という業界の原則があったり、「比較広告」のような広告手法が利用されたりしています。

出典|日米の広告の違い(ムサシノ広告社)

また、既に付加価値の低い「広告枠販売」は機能分社化し人件費の低い人材で回しており、上記の付加サービス(=アイデア)を提供する会社には相応のフィーを支払うよう変化しているようです。

出典|広告業の進化と歴史、そして大転換(業界人間ベム)

広告代理店 vs コンサルティング企業

そこで登場したのが、従来よりクライアント支援のスタンスでフィー型のビジネスを行ってきたビジネスコンサルティング企業です。近年、広告領域へと領域を積極的に拡大しています。

ここ数年、IBM、デロイト、PwC(プライスウォーターハウスクーパーズ)、アクセンチュアなど、従来はビジネス戦略・ITコンサルティング会社と考えられてきた企業群が、エージェンシー機能を社内に構築したり、クリエイティブエージェンシー、デジタルエージェンシーを買収して、広告・マーケティングサービス市場に参入してきている。

背景は調査会社ガートナーによる、2017年には大手企業のCMOが使うIT予算がCIOの予算を超えるという4年前の予測にある。CMOはCRM・DMP・データウェアハウスといったデータ関連のツールから、マーケティングテクノロジー、アドテクノロジーに加え、様々なテクノロジーへの投資を行い始めている。戦略立案に加え、もともとIT分野の業務をしてきたコンサルティング企業が、新たな予算獲得のためにマーケティング分野へ進出するのは当然のことである。

出典|相次ぐコンサルティング会社による広告会社買収、米国の動向まとめ(AdverTimes)

欧米だけではなく、日本でもアクセンチュアがIMJを子会社化するなど、コンサルティング企業が広告代理店の競合となりつつあります。

日本では、どちらが勝つのか。アジャイルメディア・ネットワーク 取締役の徳力基彦氏は「広告代理店有利」とみているようです。

今後この両者の戦いでカギになるのは、戦略立案やプランニングなどのアドバイスに対して「フィー」を支払うという商習慣が日本企業でどれぐらい許容されるかどうかだと感じています。

実は私はNTT退職後にITコンサル会社に1年だけ在籍したことがあるのですが、当時先輩が「日本はコンサル市場が米国に比べて小さいから今後確実に成長する」という発言をしていたことを良く覚えています。ただその際に逆説的に感じたことは、実はコンサル会社が「フィー」を元に提供している有料コンサルや有料アドバイスという市場を、日本においては総合広告代理店や総合商社が無料で提供するというある意味フリーミアムなビジネスモデルで無力化しているのではないか?という仮説でした。

私自身の経験では、コンサルティングの現場(=フィー型の商習慣に慣れている企業)でクライアントにヒアリングすると、マージン型の報酬制度に不満を持っていることも多いです。

CM作成などのクリエイティブ機能は一朝一夕には真似できないかもしれませんが、インターネット広告における運用は、そのノウハウを身につけることは比較的容易だと思われます。フィー型や成果報酬型のビジネスモデルで、広告主のマーケティング(特にインターネットマーケティング)を支援できることを訴求できれば、コンサルティング企業を採用する企業は増えるかもしれません。