物流の完全自動化に向けたAI活用

政府は物流の完全無人化を掲げる

最近、物流会社の人手不足が話題になっています。ヤマト運輸は通販各社との値上げ交渉を始めたという報道もありますが、「人手不足」と「消費者の便利さへの要望」はなくなることはなさそうです。そんな中、政府は3月3日に「2030年までに物流を完全無人化にする」という工程表を発表しました。

移動・物流、医療・介護、ものづくりの3分野でそれぞれ実現を目指す技術水準を、3つの段階に分けて明記した。インターネット通販の急増でドライバー不足が深刻な物流分野では、2030年ごろまでにモノの輸送や配送を完全無人化する技術を確立する。

上記引用記事では、AIの活用による自動運転やドローンについて言及していますが、その他にも完全無人化に向けて対処しなければならない課題が様々あるでしょう。

物流の業務プロセスを考えると、ざっと以下でしょうか。
  1.  入荷(物流拠点に品物を集め、適切な場所に保管する)
  2.  受注情報の受け取り
  3.  ピッキング作業(出荷)
  4.  配送トラックの手配/輸配送ルートの決定
  5.  配送
  6.  受け渡し

AIの活用という観点で考えると、③④あたりが早期に実現できる領域ではないかと考えられます。⑤は自動運転そのものであり、自動車会社やITベンチャーなど多数の企業が取り組んでいます。実用化に向けてはまだ時間が掛かりそうです。

AI活用によるピッキングの改革

物流拠点においては③のピッキング作業にもかなり人手が取られます。それを解消するソリューションが、いくつか出始めているようです。

国内の物流現場が変革を迫られている。これまでは紙の伝票と手作業が中心で労働集約型産業の典型だったが、生産人口の減少により雇用の維持・確保が難しくなった。一方でインターネット通販市場の成長で扱う荷物が増え、物流オペレーションは複雑になるばかり。そんな中、ベンチャー企業や大企業がロボットや人工知能(AI)を使った課題解決の提案を始めている。

例えば、Amazonは「キヴァシステムズ」という企業を買収し、Amazon Roboticsとして物流拠点に導入しています。

アマゾンが、自社配送センターにすでに3万台ものキヴァ・ロボットを投入しているという。この数は約1年前と比べて倍増。これは13カ所の配送センターの総数というから、平均1カ所で2300台ものロボットが動いていることになる。ものすごい速さで配送作業を効率化しているさまがうかがえる。

配車もAI活用の余地あり

④の配車については、「Lyna Logics」という企業が配車専門のソリューションを提供しています。配車を行うにあたっては、配送ルートと出荷の順番を同時に決めることが非常に難しいそうです。バース繰りという、トラックの積み降ろしキャパ数を考慮した最適化が必要とのことですが、こういった複雑なシミュレーションこそAIの活躍できる領域でしょう。

配送計画を難しくする運行パターンの例として「宵積み」を挙げました。宵積みできる車両とできない車両が混在する状況にうまく対処できるようにするのは、私たちも非常に苦労しましたが、実はもっと難しい配送条件があります。それが「バース制約」です。

前述したヤマト運輸でも、AIを活用した配送に取り組みはじめているそうです。
ヤマトホールディングスは2017年中に、ドライバーの負担軽減を狙いに、配送業務の基幹システム「NEKOシステム」を刷新する。人工知能(AI)を活用して最適な配送ルートを割り出すほか、ドライバーが持つ専用端末を廃止して市販のスマートフォンやタブレットを利用し、導入関連費用を低減する。
⑤の自動運転については、画像認識などAIの活用が必須と考えらますが、また改めて調べてみたいと思います。また、仮に自動運転が実現しても、⑥の受け渡しというプロセスがあります。ここは宅配ボックスやコンビニエンスストアの活用など、物理的な投資や他業種との協業が必須だと考えられます。例えば楽天では、すでに楽天ボックスというサービスを始めています。
楽天市場でご購入いただいた商品の「お受け取り専用」のロッカーです。
■お好きな時間に好きな場所で受け取れる!
お出かけ前やご帰宅時など、時間を気にせず好きな時間に商品を受け取れます。
■お荷物をすぐに受け取れる
楽天BOXに直接商品が届くので、ご不在時でも再配達など連絡なしでお受け取りができます。

上記のサービスやソリューションをうまく組みあわせないと、「物流の完全無人化」は難しいでしょう。一方で、物流をサービス業と位置づけると、唯一の顧客接点と捉えることもできます。消費者は人的なサービスに満足を感じるという側面もあるので、どこまで効率化・無人化することが適切か考える余地がありそうです。