もう先生はいらない?「アダプティブラーニング」とは。

「教育のICT化」・「Edtech」などの言葉がバズワードとなった2014~2015年頃は、「教育」におけるデジタルの活用は映像授業やタブレット用の学習教材の提供にとどまっているのが現状でした。しかし、人工知能(AI)が実用化段階まで進化した結果、ここ最近は具体的なデジタル活用事例が増えてきた印象を受けています。

教育における、デジタルならではの価値とは何か?

まずは、デジタル化によって、教育がどのような変化を遂げているのか整理してみましょう。

NTTデータ経営研究所が、教育におけるデジタル化の価値を整理していましたので以下に紹介します。

(1) 学習行動の記録・解析に基づく学習効率の向上をもたらす教材の個別化
PCやタブレット等で入力された学習行動の記録はデータとして蓄積され、人工知能などの解析技術の発展とその利用の低コスト化により、各ユーザーの学習効率が向上するにように教材を個別化できる。

(2) 端末間連携により幅広い視野の獲得を可能にする協働学習
教室や遠隔地間での授業・講義において、各ユーザーの考えや発想の可視化と共有が可能となり、各ユーザーは従来の授業では気付けなかった幅広い視野を獲得できる協働学習を実現できる。

(3) 誰もが教育を受けられるアクセシビリティ
大規模オンライン授業やさまざまなインタフェース技術、マルチメディアコンテンツ等、複数のテクノロジーの適切な活用により、居住地域(山間部や離島、海外など)、障がいや所得の差などに依存しない、誰もが教育を受けられるアクセシビリティを実現できる。

(参照|NTTデータ 「デジタル教育ビジネスの展望とビジネスの肝 ~教育の本質とテクノロジーの提供価値の観点から~」)

冒頭で述べた「映像授業」は、(3)に当てはまります。近頃は大画面スマートフォンの普及を受けてか動画広告や動画メディアが流行していますが、教育業界においても動画がブームとなっており、教育大手各社が続々とサービスをリリースしています。

学研|プライムゼミ (実力講師の難関大対策向け映像授業)

トライ|Try IT (映像授業と質問回答サービス)

グロービス|グロービス学び放題

ただしこれらは、あくまでもインフラが動画配信に耐えうるレベルまで整ったことによる変化であり、デジタル化がもたらした変化として本質的ではないかもしれません。

 

先生はいらない?アダプティブラーニングによる学習の効率化

デジタル化における利点は、データがデジタル化され「まったく同じものを労力なく複製できること」「コンピュータで大量処理可能なこと」にあります。つまり、大量なデータをより複雑な組合せで分析することで、これまで人力では成しえなかった分析・予測が可能となっていることが、デジタル化における大きな変化の一つと言えます。※デジタル化におけるポイントについては過去記事「ビジネスがデジタル化してるって?」を是非ご参照ください。

この「大量データ処理・分析」に人工知能(AI)を組み合わせ教育に応用した「アダプティブラーニング(習熟度別学習)」が進化しています。

元々は個々の生徒の進捗に合わせ、学習内容や学習レベルを調整し提供しようという考え方を指す言葉ですが、最近では生徒個々の学習の進捗状況をログとして残し、それを分析・反映することで学習内容を分岐・最適化して提示していく技術と、その技術を利用したサービスを指すことが多いように感じています。

(参照|ReseMom「アダプティブラーニングとは」)

「アダプティブラーニング」は本当に効果があるのか?

人工知能を利用した学習内容のレコメンドは、学力向上に本当に役に立つのでしょうか。

リクルート次世代教育研究院による調査では、「レコメンド実施者の成績向上率がレコメンドの未実施者の成績向上率を大きく上回る」という結果が出ていました。特に数学ではその傾向が顕著だったそうです。

 

(参照|リクルート次世代教育研究院「学習レコメンドにより成績向上の有意差を確認」)

 

日本における「アダプティブラーニング」の取り組み

日本においては、アダプティブラーニング技術が実用段階に入ったのか、個別最適化を売りにしたサービスが続々とリリースされています。

Z会 Asteria

Asteriaは、内容理解・問題演習・添削指導などすべての学習がタブレットで完結するようにつくられており、個人の理解度に応じて、一人ひとりが適したスタート位置から学習を始められる。

米国Knewton,Inc. 社のアダプティブエンジンを使用することで、学習者が一問解くごとに、理解度やこれまでの学習履歴などのデータに基づき、次に学ぶのに最適な問題を提供していく。タブレットの大きなメリットは、こうした「アダプティブ(適応)学習」ができることにある。もちろん、機械的な学習だけでなく、Z会の特長である「添削指導」も取り入れられている。学習の節目で第三者による添削指導を受けることで、客観的な視点が身に付き、学力の定着が図れるというわけだ。

(参照|東洋経済オンライン「「なぜ勉強が必要なのか」子どもの質問にあなたならどう答えますか」)

Classi株式会社

「授業・学習コンテンツ」をはじめ、個々の生徒情報が蓄積される『生徒カルテ』、先生間の情報共有や生徒へのメッセージ配信などに役立つ「コミュニケーション」機能などをご用意しています。
Classiは教育系大手出版社が提供する各教科のベストセラー問題集から選抜した5万問が使い放題となる「問題集パック(※2)」にKnewtonを採用し、今夏から全国の高校・中高一貫校向けにアダプティブラーニングサービスを提供します。これにより、先生が生徒に共通の問題を出題したあと、Knewtonが生徒の理解度を元に、次の問題から生徒一人ひとりに異なる問題を出題できるため、幅広い授業設計が可能になります。

(参照|Classi株式会社「ベネッセとソフトバンクの合弁会社Classi株式会社、アダプティブラーニング(個別適応学習)の提供を本格的に開始」)

学研 自立型個別学習塾G-PAPILS

学研の教材コンテンツとKnewton社のアダプティブラーニングテクノロジーを生かし、個々の学習者に応じた学習を提供する。

G-PAPILSは、能動的に学習に取り組み、自己調整学習ができる「優れた学習者」の育成を目的に開発、リリースされた学習システム。人工知能(AI)が個々の学習者の理解度を分析し、理解度向上のために教材レコメンドを行う。

(参照|ReseMom「学研エル・スタッフィング、AI活用の自立型個別学習塾G-PAPILSを公開」)

 

日本のアダプティブラーニングを牛耳る?Knewton社とは。

すでにお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、上記のサービスはすべてKnewton社の技術を利用して提供されています。

この会社は、2008年に創業された米国の企業で、アリゾナ州立大学、ケンブリッジ大学出版、マイクロソフトなどの世界中のトップクラスの教育関連企業や学校・教育機関と数多く提携しています。

既に利用者数も多く、

これまでにKnewtonのレコメンデーションを活用した学習者は全世界で1300万人以上。アダプティブ・ラーニング(適応学習)ソリューションは世界中で選ばれ、現在もさらに進化し続けています。

とのこと。

日本におけるアダプティブラーニング技術の提供においてはKnewton社が一人勝ちの様相を呈していますが、他社も以下のような取り組みを行っています。レコメンド精度の向上には大量のデータが必要ですから、サービスをプラットフォーム化できるかどうかが、成功のカギとなりそうです。他社がどのようにサービスを拡大していくか、2017年の動向に注目しましょう。

リクルート

参照|リクルートホールディングス 「リクルート、アダプティブラーニングを活用した次世代教育プラットフォーム Fishtree Inc.への出資を実施

Fishtree Inc. は「同じ教材を全ての生徒に」ではなく「一人ひとりの生徒に合った教材を」というビジョンを掲げ、現在米国及び韓国で多くの学校法人に導入されているアダプティブラーニングシステム『Fishtree』を運営しています。

ソフトバンク

参照|サイバーユニバーシティ株式会社「企業が手軽にアダプティブラーニングを導入できるプラットフォーム「Cerego®(セレゴ)」を、国内初の販売パートナーとして販売開始

ソフトバンクグループのサイバーユニバーシティ株式会社は、Cerego, Inc.と業務提携契約を結び、国内初の販売パートナーとしてアダプティブラーニングのプラットフォーム「Cerego®(セレゴ)」の販売を開始します。

Cerego社が開発した「Cerego®」は、記憶定着に特化した学習エンジンです。認知心理学や脳科学の研究成果が取り入れられ、その技術は日本と米国で特許を取得しています。知識が記憶に定着するまで、ユーザーが意識しなくても適切なタイミングで復習問題を提示してくれるのが特長で(図1)、米国では既に幅広い分野において活用されています。

すららネット

参照|PR TIMES「桜丘中学・高等学校が「すらら」を導入 英語検定・数学検定対策の講座で「アダプティブ・ラーニング」の取組みを開始

株式会社すららネットは、クラウド型学習システム「すらら」の提供、および、運用支援を行っています。この度、桜丘中学・高等学校(所在地:東京都北区 校長:平美佐子)で「すらら」を5月より導入し、検定対策講座の受講者に対して校内や家庭学習で活用を開始します。