2017年に広がるAI翻訳とそのサービス

2017年1月1日付の日本経済新聞によると、AI関連で2017年に注目すべきキーワードは、「自動運転」「翻訳」「コンシェルジュ(秘書)」だそうです。その中でもAIの活用により、近年すでに大きな進展を果たしているという「翻訳」について今回は扱いたいと思います。実用化の観点では、3つのうち最も進んでいるようです。

自動翻訳が急速に進化した理由

2016年、「Google翻訳が劇的に改善した」というニュースやインターネットへの書き込みが増加しました。Googleに限らず、一時期は使い物にならないとさえ言われていた翻訳が改善した理由は、アルゴリズムの変化にあります。翻訳のアルゴリズムの歴史を振り返ると、約60年前に機械翻訳が登場して以来、ずっと採用されていたのは「ルール翻訳」という考え方でした。開発者が文法や言葉の規則を作り、文法・規則をもとに翻訳するという方法です。

その後登場したのが「統計翻訳」でした。これはIBMが開発したもので、大量のデータを統計処理することで翻訳の精度を高めるという考え方でした。翻訳モデルそのものを統計結果にもとづき決めます。人間がルールを作るのではなく、機械が統計処理をもとにアルゴリズムそのものを生成していくのでAIと言えそうです。そして昨年からGoogleとマイクロソフトに採用されたのが、ニューラルネットワークによる翻訳技術です。文のパーツごとに翻訳するのではなく、文単位で文脈を把握するとのことですが、一体どういうことでしょうか。

ニューラルネットワークとは

ニューラルネットワークとは、人間の脳の仕組みを活用したものとよく言われます。もう少し掘り下げてみたいと思います。

人間の脳は、神経細胞がお互いに信号(インプット)を送りあうことで情報処理を行っていますが、その信号に重みづけを行うことによって、アウトプットが決まります。そして神経間のネットワークを情報が通る際に、重み自体を軽くしたり、重くしたりするそうです。また、ネットワークを通る情報は、関連する様々なことがらに波及していくので、1つのことがらから複数の学習効果を得ることができます。

前述のパターンや統計処理には、すでに過去存在したパターンであれば処理することができても、これまで経験したことのない状況になると破綻してしまい上手に学習できないという欠点がありました。ニューラルネットワークでは、インプットが入ってきてからアウトプットするまでの経路において、情報の重みづけをグラフ化します。重みづけのグラフは、その情報が通るルート以外にも影響するので、一つのできごとで複数の学習を行うことができます。そのため、これまで経験したことのない状況においても破綻せずに適切なアウトプットを出します。

概念的ですが、人間がいままで経験したことのない状況においても、関連する経験や知識、そして言語化やビジュアル化できない直観のようなものをもとに対処していくということを機械においても行っているといえそうです。

AIを活用した翻訳サービス

GoogleではAPIを公開しているので、これから様々な翻訳サービスが誕生しそうです。Googleやマイクロソフトのプラットフォーム(アルゴリズム)だけに限らず、様々な企業が翻訳サービスを提供しています。

VoiceTra

独立行政法人であるNICT(情報通信研究機構)では、多言語音声翻訳アプリを提供しています。旅館やホテルなどにおいて、実際に外国人向けの接客に使われているそうです。無料で提供されているということですので、インバウンド強化の一環となりますね。

多言語音声翻訳アプリVoiceTra|NICT

ili(イリー)

動画を見ると、その凄さがわかります。Ring ZEROなど個性的なプロダクトを生み出しているベンチャー企業のログバーでは、iliという翻訳向けウェアラブルデバイスを提供しています。その洗練されたデザインと上記動画を見る限りでの高い品質には驚くばかりです。すでに東京メトロやイオンモールなど3,000社の企業が申し込み、東京メトロの駅では実証実験を実施しているということで、非常に期待が持てます。英語力が必要ないビジネスの世界が、本当にすぐそこに横たわっています。

ili(イリー)|ログバー

メガホンヤク

なんとメガホンをそのまま翻訳機にしてしまったという、利用シーンにかなり特化した製品です。この段階で利用範囲を制限していしまっているのがむしろマイナスな気もしますが、ネーミングも合わせてインパクトがあります。まさにドラえもんの道具ですね。

メガホンヤク|Panasonic

 

2017年はAIにとって「翻訳」が重要なテーマになるという背景が伝わったでしょうか。Googleが検索エンジンにてそのアルゴリズムを強化するために、利用者を広め益々その技術力を高めたように、これから多くのデータを収集し、アルゴリズムの改善に活用する企業がデファクトスタンダードになっていくでしょう。ログバーのような日本企業の活躍が楽しみです。

<引用>
2017年、あなたの身近にやってくる3つのAI |日本経済新聞
自動翻訳なぜ急速進化 2つのブレークスルー|日本経済新聞
ニューラルネットワーク|PCinfo
ニューラルネットワーク|静岡理工科大学菅沼研究室
ニューラルネットワーク とは|ケータイWatch