FinTech中心地、ヨーロッパのビジネストレンド

先日、ビジネスカンファレンスに参加するためにルクセンブルクを訪れました。ルクセンブルク、これまで名前を聞いたことはあるものの、どこにあるのか、国名なのか都市名なのかさえわからないほど、自分にとっては見知らぬ土地です。

ルクセンブルクは世界で一番豊かな国

ルクセンブルク旧市街

ルクセンブルクは、ベルギー、フランス、ドイツに囲まれた小国で、緑が多く、旧市街は世界遺産に登録されるほど美しい街並みです。地理的な要因から多数の戦争を経験しており、まさに要塞都市。これまで異なる複数の国に支配された歴史を持ちます。

小さな国ですが、一人あたりのGDPは世界一。2015年の実績では、一人あたり997ドル(日本円で約1,100万円)で、日本の345ドル(約380万円)のなんと約3倍です。隣国ベルギー、フランス、ドイツ国籍の外国人労働者が多いこともその理由ですが、国民一人あたりのGNI(Gross National Income=国民総所得。「どこで稼いだか(GDP)」ではなく、「どの国民が稼いだか」を測る指標)で見ても775ドルで、日本の388ドルと比べて約2倍となっています。

上位3ヵ国および米国、日本を掲載

所得の高さの理由は、政府が経済政策として競争力の高い領域、特に金融に注力していることが挙げられます。金融以外でも、放送メディアやインターネット企業など第三次産業がGDPの88%を占めるそうです。以前は鉄鋼や化学が産業の柱でしたが、オイルショックを契機に産業構造を転換し、現在は失業率も低く、経済的に非常に成功している国と言えます。

政府が規制緩和を進め外国企業を積極的に誘致していることに加え、欧州の中心という地理的な優位性もあり、多くの企業がルクセンブルクを欧州の拠点としています。また、EU機関の拠点として、欧州連合司法裁判所、欧州投資銀行、会計監査院などがあります。

欧州で注目されるRegTechとPSD2

さて、私が参加したビジネスカンファレンス「ICT Spring」は、72以上の国から500以上の企業が集まり、参加者は5,000人以上にも上る大規模な国際カンファレンスです。主にテクノロジーやデジタルに関するトピックを扱い、特にFinTechについては非常に盛り上がっていました。ルクセンブルクが近年宇宙産業に力を入れていることから、同日同会場にて「Space Forum」というカンファレンスも行われていました。

ヨーロピアンコンベンションセンター

ICT Springでは、「FINTECH」「SPACE」「TECH」、そして「DIGITAL」の4つに分かれて講演などが行われていました。私は「DIGITAL」と「FINTECH」に出席しましたが、デジタルマーケティングなどがテーマの「DIGITAL」はいまいち盛り上げりに欠ける一方で、「FINTECH」は大盛況。やはり金融が中心の国だけあって、FinTechに対する注目度が格段に高いようです。

また、このカンファレンスでは、RegTech(レグテック)に関する議論が多かったです。RegTechとは、規制(Regulation)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融機関などにおいては規制への対応が必須となりますが、それを人工知能やブロックチェーンなどのテクノロジーで解決しようというものです。特に銀行においては、KYC(Know Your Customer)という、新規口座を開く際に顧客の身元確認を行う手続きの基準が厳しくなっており、そういった規制対応に多大なコストが掛かっています。

FINTECH SUMMITの参加者は多数に上った

さらに、単一通貨「ユーロ」を導入している欧州で注目が集まるPSD2(Payment Service Directive 2)についても多くの議論がありました。PSD2とは、2016年1月より施行されたEUが定める決済サービス指令です。前身のPSDはEU内の決済サービスを標準化する指令でしたが、PSD2は第三者サービスの利用に関する指令で、金融機関が第三者パートナー(TPP: Third Party Partners)に口座情報へのアクセスを提供する必要があるとしています。

具体的には、第三者パートナーとは、AmazonのようなEコマース企業や、日本でいうとマネーフォワードのようなアグリゲーションサービス事業者を指します。これらの企業に対し、オープンAPIを提供する必要があります。

言い換えると、これまで銀行が独占していた情報を他社に開示していく必要があるということであり、銀行を中心として金融に関わるあらゆるサービスをバンドルしていた業界に、機能のアンバンドル化を促すことになります。顧客にとっては利便性が向上する可能性が高まり、銀行にとってはベンチャー企業も競合となり、競争が激化するということを意味します。

PSD2に関するパネルディスカッション

このように、規制をEUという経済圏単位で変更・緩和している現状ですが、その中でもルクセンブルクは先陣を切って業界の変革を促しています。カンファレンスに出展していたbitFlyerの方からは、政府が民間との繋がりや情報収集にとても積極的だという話を伺いました。勃興するFinTechベンチャー関連企業の多さや、こういったカンファレンスの開催を行うところからも、FinTechをけん引していこうという気概を感じます。

次回記事では、RegTech、PSD2に関連する企業をはじめ、ヨーロッパで勃興するスタートアップや新サービスについて紹介したいと思います。

<参考>
ルクセンブルク|Wikipedia
新しいFinTechか? 「RegTech」が変える金融規制|MUFG INNOVATION HUB
Know your customer|Wikipedia
The Second|Payments UK
PSD2 – the directive that will change banking as we know it|EVRY
PSD2とオープンAPI|Firorano