欧州スタートアップの中心地ベルリン

ルクセンブルクで開催されたICT Springに参加したあと、スタートアップが集まるドイツのベルリンに足を延ばしました。ドイツへのビジネス訪問といえばデュッセルドルフやフランクフルトをよく聞きます。実際に日系メーカーの多くはこれらの西部地域や、南部のミュンヘンにドイツ支社を構えます。では、なぜスタートアップはベルリンに多いのでしょうか。今回はスタートアップが集まるベルリンについてレポートします。

産業が西部・南部に分散するドイツ

ドイツ大手企業の分布(JETRO資料、クリックして拡大)

GDP世界第4位を誇るドイツにおいて、真っ先に頭に浮かぶ産業は自動車産業でしょうか。それ以外にも化学メーカーなど工業製品に強い印象があります。しかし実際には、自動車や化学メーカーといった製造業は国内総生産の20%ほどで、金融機関をはじめとした多数の非製造業も強い産業構造となっています。

左図を見て頂ければわかる通り、ドイツは首都に産業が集中しておらず、西のデュッセルドルフにはバイエルやヘンケル、南のシュツットガルトやミュンヘンにはメルセデスベンツ・BMW・Audi、フランクフルトにはドイツ銀行やルフトハンザ航空そしてSAPと大手企業の拠点が様々で、一極集中の東京、ロンドン、パリなどと異なります。

そんなドイツでは、メッセと呼ばれる産業見本市が重要な位置付けとなっており、業界ごとに多数開催されます。ちょうど宿泊したホテルでも、エネルギー関連のビジネスイベントが開かれていました。

地方で開催されるメッセも多く、アウトバーンで車を飛ばし様々な企業が集まるそうです。そのメッセは単純に製品・サービス紹介の展示会という位置づけではなく、商談会そのものだそうで、年間スケジュールや新商品の開発も、メッセに合わせて計画が立てられています。

各州は大規模のメッセを誘致することに力を入れていて、州がイベント運営会社の株主だったりします。

産業のないベルリンにスタートアップが集まる

産業が西部・南部に分散していることは理解いただけたと思いますが、ドイツ東部に位置する首都ベルリンはどうなのでしょうか。ベルリンの壁が崩壊する1989年まで、社会主義国家である東ドイツに属していたベルリンには主な産業がありません。そこでいま州政府が力を入れているのがスタートアップの誘致です。

St. Oberholzの外観 (筆者撮影)

ベルリンは首都であり、観光地としても有名であるにも関わらず、物価が非常に安いので、スタートアップが集まりやすい環境にあります。家賃やレストランが他の欧州諸国と比べても安いために住みやすく、ロンドンと異なり英語が第2言語であり、相手の話を聞こうとする姿勢もあることから、北欧や中東から人が集まると言います。産業が他州に比べてまだ未発達が故に、人材も豊富だそうです。

そんな背景により、ベルリンでは近年コワーキングスペースが増えています。その中のひとつ、ベルリン初のコワーキングスペースといわれるSt. Oberholzというカフェを訪問してみました。

ベルリンの中心部であるティーアガルデンやブランデンブルク門から少し北東に位置するこのカフェは、2005年にオープンしました。早くからWiFiや電源を提供することで、仕事のできるカフェとして知られるようになったそうです。

St. Oberholzの店内(筆者撮影)

実際にカフェではノートパソコンを開いて黙々と作業する人々が多数いました。このカフェからSoundCloudHelloFreshといったスタートアップが生まれたというので、まさにベルリンスタートアップの聖地ですね。

次に紹介したいのは、ベルリンで最大規模を誇るというマインドスペースです。こちらはもともとイスラエルのシリコンバレーといわれるテルアビブという場所で創業されたコワーキングスペースですが、2016年にベルリンに進出してきました。共同創業者のアロイ氏はベルリンを選んだ理由を以下の通り述べています。

“ニューヨークやロンドンといった都市はビジネスハブとして既に成熟しています。その点においてベルリンは、まだまだ発展途上。しかし、クリエイティビティ、イノベーション、多様性に溢れた素晴らしい都市です。世界中のあらゆる場所から起業家が集まっているインターナショナルなハブでもある。そして、スタートアップはもちろん、サービスプロバイダーやクリエイティブエージェンシー、PRエージェンシー、IRエージェンシー、ベンチャーキャピタルも多い。私たちはこれからの成長が見込める場所で『最初の開拓者』になりたいと思っていました。ベルリンを選んだのは、私たちにとっては自然な選択だったと思っています。”

出典:ベルリンのライフスタイルが反映された「マインドと魂の出会う場所」|WORKSIGHT

ミッテ地区にあるファクトリー(筆者撮影)

最後にGoogle が100万ユーロを出資して2014年に生まれたスタートアップ施設「ファクトリー」を紹介します。筆者はSt. Oberholzに行ったあと、訪問しました。

ドイツ銀行や武田薬品などの大手企業も法人会員として参加し、コワーキングスペースやミーティングルームの提供だけでなく、Uberのトラビス・カラニックCEOなど著名人を招くイベントや、モビリティをテーマにしたハッカソン、Y コンビネータによる資金調達セミナーなど開催されるそうです。

ファクトリーの館内図(筆者撮影)

Uber、Zendesk、SoundCloudといった大きめのベンチャーも入居しているようでした。複数の建物があり、それぞれ大小様々なスタートアップがオフィスを構えているようです。

先日紹介したスタートアップであるraisinもベルリン発のスタートアップでした。フィナンシャル・タイムズによると、ベルリンはBrexit後のスタートアップの誘致に成功すると主張しているとのことで、今後さらにベルリンが欧州スタートアップの拠点として盛りあがっていきそうです。

 

<参考>
ドイツの経済|Wikipedia
ドイツのGDP構成(2015年)|GD Freak!
ベルリン初のコワーキングスペースはベルリンの変化とともにある|WORKSIGHT
グーグルがベルリンに開いたスタートアップ製造基地「ファクトリー」の全貌|Forbes Japan