欧州で拡大する、便利なFinTechサービス

前回の記事ではルクセンブルクにおけるFinTechの重要性や、注目されるトピックについてお伝えしました。今回は、ルクセンブルクで行われたビジネスカンファレンス「ICT Spring」で紹介されていた中でも、特に気になったFinTechサービスについて紹介します。

複数銀行の定期預金にワンクリックで預入

Raisin(レーズン)
https://www.raisin.com/

まずは、ベルリンの企業「Raisin」を紹介します。

ヨーロッパ中の銀行の定期預金金利を比較するだけでなく、複数の銀行へ預入と口座管理が簡単にできる、というサービスです。日本でも定期預金の利率を比較するサイトは複数ありますが、利率の比較に留まり、各銀行の口座開設と資金移動はそれぞれの銀行で手続きする必要があります。

一方Raisinは、サービスに無料登録し、資金を口座に移動させれば、サイトから直接銀行の口座開設や口座管理を行うことが可能です。複数銀行に預けている定期預金を一元的に閲覧・管理したり、新しい商品についても知ることができます。

30ヵ国、31銀行の銀行と連携し、すでに4,000億円(3.0 bn EUR)の資金が投資されたとのこと。大手ネットバンクやネット証券を大きく上回るスピードで、Raisinに投資資金が預け入れられているそうです。

 

個人・店舗の支払いをモバイルだけで完結

MobilePay
https://mobilepay.dk/da-dk/Pages/The-story-in-English.aspx

こちらは、デンマークで145年の歴史を持つダンスケ銀行のサービスで、歴史ある企業でありながらも最新のサービスを提供しています。ICT Springに登壇した同行のKristoffersen氏によると、デンマークではfacebook messengerに次いで3番目に使われているアプリで、Gmailよりも利用回数が多いそうです。

このアプリでは、個人同士の支払いや、店舗への支払いをアプリで簡単に行うことができます。ユーザーの70%以上がダンスケ銀行以外の顧客ということで、もはや銀行の1サービスではなく、独立した決済サービスなっています。

利用人数は350万人で、デンマークの人口が570万人弱であることを踏まえると非常に高いシェアといえます。現在はデンマークだけでなく、ノルウェーやフィンランドに展開しているそうです。デンマークをはじめとした北欧ではキャッシュレス化が進んでおり、デビットカードの利用率が非常に高いこともサービスが普及した要因だと考えられます。

日本でも、電子マネーの利用が進み、店舗では現金を使わずとも支払いできる機会が増えました。一方でモバイルを通じた個人間決済はほとんど利用されていません。

モバイルを用いた個人間の電子決済では、LINE PayKyashPaymoなどがありますが、LINE Payの登録にあたっては身分証明書の提示など厳しい本人確認が必要となりますし、Kyash、Paymoは店舗や他オンラインサービスでの支払いができません。(二社は「資金移動業」の免許ではなく、「前払式支払手段」や「収納代行」としてサービスを提供。詳細はこちら。)

MobilePayはCPR番号といわれる日本でいうマイナンバーにあたる個人番号を利用して登録を簡易にするとともに、店舗や他オンラインサービスでも利用できる仕組みとしたことも、短期間で利用者を増やした要因のようです。

ちなみに前出のKristoffersen氏は、巨大な組織において変革することが非常にチャレンジングだったと述べていました。ベンチャー企業でなく大企業において、ユーザーの利便性を追及したサービスをローンチし成功させたことも、注目に値します。

中小企業のビジネスに直接投資

Lendix
https://en.lendix.com/

いわゆるソーシャルレンディングという投資型のクラウドファンディングで、お金を借りたい人と貸したい人をオンラインで仲介するサービスです。中小企業は銀行を仲介することなくお金を調達することができ、投資家は銀行預入よりも利率のよいリターンを得ることができます。

サイト上では、上記のように投資先となるプロジェクトが一覧で表示され、投資家は気になる投資案件の利率や詳細を確認し、約2,500円(20 EUR)から投資することができます。一方で借主はおよそ400万~4億円(30,000~3,000,000 EUR)を、3~84ヵ月の間借りることができます。銀行に関わる独占禁止法が改正されたことにより、サービスを実現することができたそうです。

ちなみに日本では、「maneo」や「LC Lending」が類似したサービスを提供しています。これらのサービスは「不動産を担保とした不動産事業者への貸付」であり、言い換えると「SPC(特定目的会社)を介した間接的な資金の貸付」となります。Lendixとの一番の違いは、貸付先の企業やその事業が明確化されないことです。

まず日本の法律では、ソーシャルレンディング運営企業は貸金業法に則って貸金業の登録が必要となます。そして、不特定多数から出資を集めて融資や出資の仲介を行うため、第2種金融商品取引業の登録も必要になります。

ソーシャルレンディング事業者によると、日本ではもし投資対象の企業や事業を明確化し、投資家がウェブを介してその案件に貸付を行うと、実質的には個人が特定企業にお金を貸すこととなり、個人が貸金業の登録を行わなければなりません。それを避けるために、投資対象を明確化せず、概要と運用利回りの提示による投資を促しています。

日本の法規制が整備され、本来の意味でのソーシャルレンディングが可能となると、事業家・投資家にとっては資金調達・投資の選択肢が広がります。LendixはフランスでNo.1のサービスとのことですが、集まっている資金はまだ120億円ほどです。一方maneoはすでに750億を超えるローンが成立しており、日本のポテンシャルを感じます。欧州ではすでにLendixのようなサービスが成り立っているので、日本の法整備も早く追いついてほしいところです。

<参考>
キャッシュレス化した北欧の決済事情と旅行者への注意点|Fika i Sverige
規制と利便性の壁崩す、「個人間」に広がるスマホ決済|日本経済新聞
ソーシャルレンディング|Wikipedia