スマート農業(3)- 農作業のロボット化

連載の第1回でも簡単にご紹介しましたが、2017年8月に3号機が打ち上げられた日本版GPS衛星「みちびき」の活用事例として、”農業のロボット化”が挙げられます。

連載第3回となる本投稿では、この”農業のロボット化”に焦点を当てていきたいと思います。

1.日本版GPS衛星「みちびき」がもたらす価値

まず、日本版GPS衛星「みちびき」がどのように”農業のロボット化”に貢献するのか、確認していきましょう。

従来の衛星と「みちびき」の差

これまで、携帯電話やカーナビなどで利用しているGPSは、31機あるアメリカのGPS衛星を一部利用することで提供されていました。アメリカのGPS衛星は地球全体を周回しており、配置の関係から電波が防風林や建物に遮られます。そのため、GPSの精度は低くなり(誤差約10m※1)、安定的な測定が出来ないという課題がありました。

それに対し日本版GPS衛星「みちびき」では、打ち上げが予定されている全4機(2017年秋に4機目が打ち上げ予定)のうち3機は、各機1日8時間は日本上空を周回する予定です。より長時間、安定した電波を受け取ることが出来るようになることで、日本のGPS精度は誤差10cm以下まで高まると言われています。

GPS精度の向上がもたらすもの

このGPS精度の向上と安定によって期待できるのが、トラクターなどの運転の自動化です。

株式会社クボタでは、2016年8月よりGPS農機の販売を開始しています。2017年6月からは更に高度なGPS農機として「アグリロボトラクタ」のモニター販売が開始されています(※2)。「アグリロボトラクタ」では、無人機による自動運転作業が実現されており、作業者は圃場(ほじょう:農作物を育てる場所)周辺から監視しながら作業を行う事が出来ます。

また、ヤンマー株式会社と北海道大学における共同研究では、複数台の農機による同時作業や、農機具から圃場までを無人かつ自律的に走行する、夜間作業に適した農機の研究も進められています。(※3)

さらには、あらかじめ圃場のデータを登録する事で、場所ごとに適切な量の肥料や農薬を散布する研究も進められているようです。(※4)

2.ドローンの活用

スマート農業の世界では、ドローン活用による”農業のロボット化”も進められています。

主な活用方法は、「農薬散布の省力化」「精密農業の実現」「病害虫・害獣対策」の3つです。

農薬散布の省力化

特に代表的な活用方法が「農薬散布の省力化」です。ドローン世界最大手であるDJIは、日本国内で農業用ドローンの販売を開始(機体価格180万円〜※5)するなど、未だ高価ではあるものの実用機の販売が開始されています。

ドローンによる農薬散布には、省力化の他に農薬の吸い込みによる健康被害を避けられるというメリットもあり、機体価格の低下に合わせて普及が進むと考えられます。

しかしながら、省力化の重要な要素である自動運転は、国内の運用制度において導入が認められておらず、規制面での調整も求められる状況です。

精密農業の実現

「精密農業の実現」では、上空からのマルチスペクトル(※6)撮影による農作物の生育状況の把握などが研究されています。農地の分散により、飛び地が多い日本の農業においては、全ての圃場を回らずとも生育状況が把握できるシステムの実現は、省力化に大きく貢献すると考えられます。

国内の事業者においても農業用ドローンの開発が進められており、佐賀県の農林水産部及び佐賀大学農学部と共同開発を進める株式会社オプティムでは、下記の機能を有したドローンの開発が進められているようです。(※7)

  1. 夜間での無農薬害虫駆除
  2. 自動飛行機能
  3. マルチスペクトル撮影(近赤外線カメラ、サーモカメラなど)
  4. ピンポイント農薬散布

病害虫・害獣対策

ドローンを用いた病害虫対策も行われています。日中は草葉の影に隠れている、あるいは薬剤への耐性を持つ、といったこれまで駆除が難しかった害虫を、高電圧による殺虫機材を用いることで、夜間に駆除する試みが行われています。

 

山地が多く複雑な環境をもつ日本では、大型耕作機の導入が難しく、農業の大規模化・省力化が進んでいないのが現状です。

しかし、GPSやドローン技術の発達により、精密な自動運転が可能となり、センサーや画像分析を用いた圃場環境の把握が可能となれば、日本の農業の大規模化・省力化も大きく進むと考えられます。

自動運転やドローンの活用には規制面の調整も必要となりますが、今後とも注目していきたい分野です。

 

<参考・解説>
※1. 日本版GPS衛星「みちびき」3号機、打ち上げ成功|日経新聞

※2. 自動運転農機「アグリロボトラクタ」を市場”初”投入|株式会社クボタ プレスリリース

※3. どこまで進化する?農業ロボット研究最前線を北海道からレポート!|ヤンマー株式会社

※4. 「みちびき」が可能にする新たな測位サービスの創出|JAXA

※5. DJI、農薬散布用ドローン「AGRAS MG-1」の国内販売を開始|DJI JAPAN株式会社 プレスリリース

※6. 複数の波長帯の電磁波

※7. 人工知能搭載ドローンが「寝ている間に害虫駆除」佐賀で実証実験に成功|GIZMODE