米国大手金融機関が考えるビットコインの課題と、仮想通貨に関する取り組み

ここ最近、米国大手金融機関経営者のビットコインに対するコメントが報道されており、その影響によりビットコイン価格が上下しています。

果たして、彼らはビットコインをどのように考え、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

米国大手金融機関経営者たちのコメント

口火を切ったとされるのはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOで、ビットコインをFraud(詐欺)だと主張する旨の報道がありました。

その後、モルガン・スタンレーのジェームズ・ゴーマンCEOやゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOが肯定的な発言をしているといった報道が続きました。

以下の表は、米国の大手金融機関経営層及びIMF長官のビットコインに関する報道を時系列に纏めたものです。(記事タイトルを元に肯定的に報道されているものを青、否定的に報道されているものを赤で記載)

■米国の大手金融機関経営層及びIMF長官のビットコインに関する報道まとめ

2017/9/12  JPモルガン・チェース:ジェイミー・ダイモンCEO
記事タイトル ビットコインは詐欺、取引行えば即解雇する-JPモルガンCEO
記事内容 ・同行のトレーダーがビットコインの取引を行ったとしたら解雇すると言明。
・ビットコインは詐欺であり、最古のバブルと言われる17世紀オランダのチューリップ・バブルより悪い。
・ビットコインの基となるブロックチェーン技術については、有益かもしれない。
・ベネズエラやエクアドル、北朝鮮などに住む人や、麻薬密売人や殺人者の類いであればドルよりもビットコインを使うことで裕福になるだろう。このようにビットコインの市場は存在し得るが、限定的なものになるだろう。
情報元  Bloomberg
 日本語訳
2017/9/27  モルガン・スタンレー:ジェームズ・ゴーマンCEO 
記事タイトル ビットコイン、「単なる流行ではない」-モルガンSのゴーマンCEO
記事内容 ・ビットコインは明らかに、単なる流行りものを超えている。
・匿名の通貨という概念は、プライバシー保護の観点から非常に興味深い。その制御について中央銀行システムに対して示唆するものがあるからだ。
・非常に投機的なものであることは明らかだが、本質的に悪いものではない。
情報元

Bloomberg
日本語訳

2017/9/29  IMF(国際通貨基金):クリスティーヌラガルド長官 
記事タイトル IMF長官「ビットコイン(仮想通貨)の影響は無視できない。」
記事内容 ・仮想通貨は現在の通貨と通貨政策に影響を与えるかもしれない。中央銀行の最善の方法としては、現在の通貨政策を効果的に続行していき、併せて経済について斬新なアイディア(仮想通貨等)や新しい需要について広く受け入れていくこと。
・昔専門家たちはパーソナルコンピューター(パソコン)は世界では適用できない、またタブレットについても高価であり使われないと議論をしてきた。よって仮想通貨について見過ごすことは賢いとは言えないのではないか。
情報元 abcNEWS
2017/10/3  ゴールドマン・サックス:ロイド・ブランクファインCEO
記事タイトル ゴールドマン・サックスのCEOがビットコインに関しツイート 「ゴールドに代わるものとして紙幣が出てきたときも人々は懐疑的だった」
記事内容 ・ビットコインについては、まだ考え中だ。結論は出ていない。是認もしなければ、否定もしてない。
・ゴールドに代わるものとして紙幣が登場したとき、人々が最初は懐疑的だったことを思い出したい。
情報元 BLOGOS
2017/10/3  ブラックロック(世界最大の資産運用会社):ラリー・フィンクCEO 
記事タイトル ブラックロックCEO、仮想通貨の成長は「大量のマネーロンダリング」の証拠
記事内容 ・仮想通貨の基盤となっているブロックチェーン技術に将来性を感じているが、ウォール・ストリートを席巻している仮想通貨の潮流に迎合するつもりはない。
・ビットコインの350パーセントにものぼる爆発的な成長は、不正の現われだろう。
・真のグローバルな仮想通貨は支持する。もし我々が真のグローバルな仮想通貨を作り出せば、ちなみに私は仮想という言葉が嫌いだが、マネーロンダリングはもうなくなり、全てが明白になり、順調に動き出すだろう。
情報元

BUSINESS INSIDER JAPAN
日本語訳

2017/10/4  UBSグループ:アクセル・ウェーバー会長 
記事タイトル UBS会長もビットコインに否定的
記事内容 ・ビットコインは通貨の最も重要な機能の一部を果たさない。
・通貨の重要な機能は決済手段であり、一般に受け入れられなければならず、価値の蓄えでなければならず、取引通貨でなければならない。 ビットコインは取引通貨でしかない。
ビットコインを支えるブロックチェーン(分散型台帳)技術については肯定的な考えを示し、やがてはデジタル台帳の考え方が広く受け入れられるだろう。
情報元  US Frontline

一見、米国の大手金融機関経営層及びIMF長官の間で意見が割れているように見えます。

しかし詳細な報道内容を(表の「詳細」)を読むと、筆者は一連の報道を一つの主張にまとめられるように感じました。

すなわち、以下の通りです。

  • ビットコインを支えるブロックチェーンという技術については肯定的
  • 但し、ビットコイン自体には問題がある
    • 問題点①:投機的側面が強く、ボラティリティが高い
    • 問題点②:マネーロンダリングに利用されている

ここからは、これら2点の問題点についてみていきます。

問題点①:投機的側面が強く、ボラティリティが高い

これはいまさら説明するまでもないかもしれません。2009年には1円にも満たなかったビットコインですが、記事執筆(2017/10/10)現在は1ビットコイン=50万円を超えています。これをバブルと捉えるかは意見が割れますが、日々の報道で価格が大きく変動しています。

投機対象としてはよいが、通貨として本来求められる安定性がまったくないのも事実です。

問題点②:マネーロンダリングに利用されている

一般的に、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、マネーロンダリングには不向きだと考えられています。なぜなら仮想通貨を支えるブロックチェーン技術は全ての取引履歴がオープンに記録されるという仕組みなので、透明性が高い(取引の追跡が可能)からです。

実際、2015年英財務省は、「ビットコインのマネーロンダリングリスクは銀行以下」だとするレポートを発表しています。

ビットコインの資金洗浄リスクは銀行以下と評価、英国政府が発表|ビットコインニュース

それではなぜ、ブラックロックのラリー・フィンクCEOは「ビットコインの350パーセントにものぼる爆発的な成長は、不正の現われだろう。」と主張しているのでしょうか。

日本経済新聞の記事を紹介します。

ビットコイン 広がる悪用 急騰の裏でサイバー攻撃や資金洗浄…|日本経済新聞

記事によると、問題は2点あるようです。
・本人確認など不正防止策を義務づけていない仮想通貨取引所が世界各地に存在すること
・取引所を介さない相対取引があること

上記はビットコインに限ったことではなく仮想通貨全般に言えることですが、今後はマネーロンダリングに対する規制を各国政府等が協力して推し進めていく必要があります。

参考までに、EU・アメリカ・日本政府がそれぞれで進めている規制に関する記事をご紹介します。

EU連合、ふたたび仮想通貨の取引規制強化に乗り出す|ビットコインニュース

米連邦議会、マネロン・テロ資金供与対策法に『仮想通貨』を追加|ビットコインニュース

仮想通貨 資金決済法で定義・義務明示|日本経済新聞

金融機関の仮想通貨に関する取り組み

ここまでは米国大手金融機関及びIMF長官発言から、ビットコインが抱える課題について見てきました。

しかし、ビットコインを支えるブロックチェーンについては肯定的に捉えており、実際に金融機関は仮想通貨に関して多数の取り組みがあります。最後に、金融機関が行っている仮想通貨に関する取り組みをいくつか紹介します。

リップル/Ripple

まずはリップルです。
ブロックチェーン技術を活用して、貿易決済や仮想通貨送金など金融取引にかかるコスト削減を目指す取り組みです。米国や英国の中央銀行をはじめ、各国の金融機関が参加しています。日本からもメガバンクをはじめ多くの金融機関が参加しています。

米ブロックチェーンVB、世界の金融機関40社が出資|日本経済新聞
Rippleを利用する企業・団体|Ripple総合まとめ

セトルメントコイン

続いてスイスのUBSが取り組むセトルメントコインです。
こちらも各国の銀行が参加しており、日本でも三菱UFJフィナンシャル・グループが参加しています。

スイス・UBSが取り組む「セトルメントコイン」、ブロックチェーン使い世界中の銀行口座をシームレスに|ビットコインニュース
UBSの仮想通貨グループに三菱UFJなど6行が加わる|MSN

日本の金融機関による独自仮想通貨

また日本においては、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループが独自仮想通貨の開発を行っています。

三菱UFJ、仮想通貨「MUFGコイン」初公開 スマホアプリで送金|IT media
みずほ、「Jコイン」創設表明 他銀とも連携目指す|日本経済新聞

各国の金融機関がビットコインをどのように扱っていくのかはまだまだ不透明ですが、ビットコインを支えるブロックチェーン技術は確実に受け入れているようです。