アパレル各社のEC戦略とEC化率(1/3)-アダストリア・ベイクルーズ・TSI・UA

国内アパレル市場は横ばいの推移を続けていますが、プレイヤーや販売チャネル、売上シェアなど、内訳は常に変化しています。中でも、販売チャネルにおいて特に存在感を強めているのが「EC」です。従来のメインの販売チャネルである百貨店・量販店の売上が落ちる中、ECの売上は着実に伸びています。

国内アパレル市場に関する調査を実施(2016年)|矢野経済研究所

その勢いは衰えを知らず、ファッション通販プラットフォームとして成長を続ける「ZOZOTOWN」がプライベートブランドの製造・販売に乗り出すことを発表したり、通販専門で販売していたファッションブランドが店舗を構えたりと、最近ではECで成功を収めた企業がリアルの世界に進出する、という流れがトレンドになりつつあります。

販路拡大の流れ
販路拡大の流れ(イメージ)

 

当然、既存のブランド各社も数年前からECを重要チャネルと位置づけ、売上拡大に向けた各種施策を打っていますが、その成否は分かれています。そこで今回は、ブランド各社の現在位置と目指す方向性、そしてどの企業が成功を収めるのか、予想します。

アパレル各社の売上とEC化率

まずは、アパレル各社の売上を横軸に、EC化率(売上に占めるEC売上の比率)を縦軸にプロットしてみます。

売上(億円)とEC化率

ユニクロの売上がダントツに大きく、「ユニクロ 対 その他」のような印象を受けますね。ユニクロのEC化率は6%と低く見えますが、売上が大きいためEC売上も487億円とかなり大きいです。

このままではユニクロ以外の企業の差が分かりにくいので、ユニクロを除いた表も確認してみます。

売上(億円)とEC化率 *ユニクロなし

各社の差が分かりやすくなりました。さらに各社の戦略やECサイトを比較すると、筆者は以下のような分類ができると考えています。

第1回では、ECに早期から注力していた企業のEC戦略やトピックを見ていきます。

他の企業の記事はこちら
第2回:ワールド、オンワードの売上・EC化率の推移と施策まとめ
第3回:PAL・三陽商会・レナウンの売上・EC化率の推移と施策まとめ

各社の戦略と取り組み

EC早期注力グループ

アダストリア

売上高:2,036億円
EC売上:291億円
EC化率:14.3%
(2017年2月期)

今回取り上げた企業の中で、ユニクロを除き、最も高いEC売上を誇るのがアダストリアです。9月末に発表された2018年2月期の第2四半期報告では、上半期のEC売上は152億円と発表されており、単純計算で通期300億を突破する勢いです。

半期毎の売上推移 (店舗売上は連結からECを引いて算出) *2016年=2017年2月期

ECに本格的に注力しだしたのは2012年以降だと思われます。2012年11月のECサイトリニューアルで基本的な機能の充実を図り、2014年11月にはポイント共通化を行い、本格的なオムニチャネル施策の推進やCRMを開始しています。

結果として会員数も右肩上がりに伸びており、2018年2月期 第2四半期は約620万人に達しています。

*2012年上期、2013年下期は不明

 

通販新聞による、アダストリアWEB営業部長への最新インタビュー(2017年6月)によれば、商品のブランド力に加えて、各ブランドを手掛ける営業部門が、在庫配分等においてECを考慮した運用を行っていることが、成長のベースにあるとのこと。また、行動履歴に基づいた1to1メールなど、データを活かした販促企画や会員の質を高めるCRM施策などにも注力しています。

アダストリアのECが伸びている理由と今後の戦略|ネットショップフォーラム

ここまで築き上げてきたブランドや顧客基盤をフルに活かしており、更なる拡大が期待できそうです。

 

ベイクルーズ

売上高:1,076億円
EC売上:280億円(予測)
EC化率:26.0%
(2017年8月期、売上高は連結)

アダストリアに次ぐEC売上の規模を誇るのが、ベイクルーズです。売上高に占めるEC売上の割合は年々拡大しており、EC化率は取り上げた企業の中では最大の26%、なんと売上の四分の一を占めるまでに成長しています。

特に近年は自社ECの成長が著しく、EC売上に占める自社EC比率は50%まで拡大しています。

自社EC/他社ECの売上

ECを統括する取締役への最新インタビュー(2017年8月)によれば、ベイクルーズは業界の中でも早くからオムニチャネル施策に取り組んできたとのこと。そのオムニチャネル戦略の一つに「脱モール依存」を掲げており、近年その結果が出てきたことがわかります。

「ネット専業」と戦う。5年で自社EC売上が10倍に!ベイクルーズのオムニチャネル戦略|SELECK

オムニチャネル戦略としては他にも、ECのPDCAの高速化を目指し、EC運営部門をブランド横断型に変更した「新ファンクション(組織体制)」や、会員情報や在庫などを店舗とWEBで統合する「プラットフォーム化」を挙げています。

前述のアダストリア同様に、ECに注力できる組織作りとデータの活用が、ベイクルーズの成長のエンジンとなっているようです。

 

TSI

売上高:1,591億円
EC売上:254億円
EC化率:16.0%
(2017年2月期)

ベイクルーズと同規模のEC売上を誇るのが、nano・universe や NATURAL BEAUTY BASIC などのブランドを扱う、TSIホールディングス(以下TSI)です。EC化率だけを見れば、アダストリアよりも高い16%を占めていますが、店舗の売上が減少傾向にあることもEC化率を押し上げる要因となっているようです。

TSI全体では上記の通りですが、ブランド毎にEC化率をみると、ナノ・ユニバースはEC化率40%、アルページュはEC化率30%弱と特定のブランドにおけるEC化が非常に進んでいます。

特にEC化率の高いナノ・ユニバースのWEB戦略部部長のインタビュー記事(2016年11月)によれば、ナノ・ユニバースでは2013年からオムニチャネル施策に取り組んでおり、在庫やポイントの統合やCRM施策を他社に先駆けて実施していたとのこと。2018年2月期は「パーソナライズ」にさらに注力し、来訪者の行動履歴に合わせてプッシュ通知を行う等の施策を行う予定で、EC売上のさらなる拡大が期待できます。

【ナノ・ユニバース 経営企画本部Web戦略部 越智将平部長】スマホアプリ核にオムニ施策推進|日経ウェブ

また、通販新聞によると、2020年には2017年2月期のほぼ倍となる500億円を売上目標としています。かなり高い目標ですが、ECにおける成功事例・ノウハウを横展開できれば、実現性も高まるでしょう。

TSIグループのEC戦略は?|通販新聞

 

UNITED ARROWS

売上高:1,455億円
EC売上:202億円
EC化率:13.9%
(2017年3月期、売上は連結)

セレクトショップとして多数のブランドを取り扱うユナイテッドアローズも、EC売上高が200億を超え、EC化率が高い企業の一つです。EC売上のうち、60%はZOZOTOWNからの売上、20%が自社サイト、残り20%は複数の他社ECサイトからの売上という構成になっています。

2013年のインタビューでは、既に店舗連動施策の強化、店舗での会員化、店舗とECの在庫連動、EC拡大に注力できる組織体制など、上記の3社同様、オムニチャネル施策として多くの施策に取り組んでいます。直近の2017年3月期でも、ハウスカード(店舗)会員とEC会員のポイント共通化やECでの売れ行きを参考にした在庫積み増しなどの施策に取り組み、着実に結果を残している印象です。

EC化率10%超!ユナイテッドアローズのネットと店舗を連動させたO2O戦略の秘訣|MarkeZine

日本経済社の記事でも紹介されている通り、ユナイテッドアローズはECを今後の成長のけん引役と捉えており、今後はさらなるECへの投資と成長が予想されます。

ユナイテッドアローズ、ECに懸ける3度目の復活|日本経済新聞

 

ECにおける成功の理由は?

これまで、ECで成功しているアパレル4社の売上とEC化率、そしてインタビュー記事などから注力施策を確認しました。

各社の共通点は大きく、2点ありました。

  • 店舗とECが連動する「オムニチャネル」の実現を早期に掲げ、会員情報や在庫情報を連動させていること
  • EC部門を横断型にしたり、ブランド部門がECを考慮し在庫を配分する等、オムニチャネルを推進しやすい組織にすること

各社とも、元々店舗で大きな顧客基盤を抱える企業でした。そのため、ECを利用しやすい仕組みを作っておくことで、ユーザーの購買ルートの変化(店舗→EC)の流れの中でも顧客を離さずに、ECの売上を伸ばすことができたのではないでしょうか。

また、店舗から見れば、ともすれば「ECに売上を奪われてしまう」とも感じるような状況の中で、その不安や反対にも負けずにECに注力できる組織を作り上げたことも、各社の成功のキモであったと感じます。

 

第2回では、残りの企業がどのような取り組みで後れを挽回しようと考えているかを調べ、そして第3回では、アパレルECにおける最新のトレンドを追うことで、アパレルECの概況を捉えていきたいと思います。

他の企業の記事はこちら
第2回:ワールド、オンワードの売上・EC化率の推移と施策まとめ
第3回:PAL・三陽商会・レナウンの売上・EC化率の推移と施策まとめ