メガバンクにおける仮想通貨の取り組み

以前このサイトでは、米国大手金融機関における仮想通貨に対するスタンスをレポートしました。今回は、日本のメガバンクの取り組みをまとめたいと思います。

メガバンク3行の仮想通貨に関する報道

以下は、日本経済新聞社に掲載されたメガバンク3行の仮想通貨に関する主要な報道を時系列に並べたものです。

メガバンク 分類 報道タイトル・内容
みずほFG 独自仮想通貨の開発 みずほと日本IBM、仮想通貨活用へ共同で技術検証(2016/6/22)
MUFG 独自仮想通貨の開発 三菱UFJ銀、新金融モデルへ布石 仮想通貨技術に投資(2016/7/8)
みずほFG 独自仮想通貨の開発 みずほが仮想通貨 IBMと開発、情報保護に課題(2016/12/8)
みずほFG リップルへの参加 銀行ブロックチェーン始動へ、国内47行の本気度(2017/3/3)
MUFG リップルへの参加 新送金システム国内連合、三菱東京UFJも参加(2017/4/24)
SMBC リップルへの参加 新送金システム連合、ゆうちょ銀と三井住友銀も参加(2017/7/11)
みずほFG 独自仮想通貨の開発 新仮想通貨「Jコイン」 みずほ・ゆうちょ・地銀が連合(2017/9/17)

 

報道内容を整理すると、2つに集約されます。

  • リップルの内外為替一元化コンソーシアムに参加
  • 独自仮想通貨(MUFGコイン、Jコイン)の開発

リップルの内外為替一元化コンソーシアム

リップルとは米国のベンチャー企業リップル社が開発した送金システムで、円やドルなど異なる通貨をネットワーク内の仮想通貨(XRP)に換えて送金するネットワークのことです。

世界各国の銀行がこのネットワークに参加しており、送金の迅速化・低コスト化を目指しています。国内の大手行や地銀など61行の参加が決まっており、そうなると国内預金量の8割をカバーすることになります。

2017年度内を目途に韓国の銀行と送金実験を行う予定で、2018年度には本格稼働が期待されます。

SBI系、仮想通貨で海外送金 日韓の銀行間で実験|日本経済新聞社

独自仮想通貨(MUFGコイン、Jコイン)の開発

2017年10月3日(火)~ 6日(金)、幕張メッセで アジア最大規模のIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC JAPAN 2017」が開催されました。 この場で、三菱UFJフィナンシャル・グループは初めてMUFGコインを一般公開しました。

三菱UFJ、仮想通貨「MUFGコイン」初公開 スマホアプリで送金|IT media

記事によるとMUFGコインの概要は、以下となります。

  • アプリ上で預金口座の残高を1円=1コインに交換
  • 事前に登録した「友達」と取引が可能
  • コインから円への還元が可能
  • 友達同士で食事代などの精算(いわゆるワリカン)が可能

また、みずほフィナンシャルグループはゆうちょ銀行や数十の地銀と手を組み、仮想通貨「Jコイン(仮称)」を扱う新しい会社を設立します。三菱UFJフィナンシャル・グループが単独で導入する一方、複数の金融機関との共通通貨にしようとしているところが大きな違いです。MUFGコインと同様に「1円=1コインでの交換」「個人間取引可能」となるようです。

新仮想通貨「Jコイン」 みずほ・ゆうちょ・地銀が連合|日本経済新聞社

銀行独自の仮想通貨にはどのような特徴があるのでしょうか。以下は、MUFGコイン、ビットコイン、一般の電子マネーそれぞれの違いになります。

銀行独自仮想通貨
(MUFGコイン)
仮想通貨
(ビットコイン)
電子マネー
(nanaco、Suica、
WAON、楽天Edyなど)
発行元 あり なし あり
ボラティリティ 低い
(円と等価のため)
高い 低い
(円と等価のため)
個人間取引 ×
換金 ×
国際利用 × ×

 

ビットコインと比較した場合、円を基軸にしたことで国際的な取引での活用が難しくなりますが、ボラティリティが低くなるため、日本国内における日常の決済手段となる可能性を秘めています。しかしすでに、電子マネーが決済手段として定着しています。では金融機関が発行する仮想通貨は、何がメリットになるのでしょうか。

  • 精算などの個人間取引に加え、CtoCプラットフォームの決済手段となりうる
  • 円による入金だけでなく、コイン(仮想通貨)から円への出金ができる

これからシェアリングエコノミーが広がったり、モバイル決済の普及に伴い個人間精算(ワリカン)を電子通貨で行うことが広まれば、既に年間の流通額が5兆円を超えるまでに伸びている電子マネーに食い込んでいく可能性があります。

最後に

大手フィナンシャルグループ3社を比較すると、三井住友フィナンシャルグループは、独自仮想通貨に関する報道がなく、リップルへの参加もメガバンクの中で最も遅く、取り組みに消極的な印象をうけます。一方で、三菱UFJとみずほフィナンシャルグループは、リップルへの参加にとどまらず、独自仮想通貨も開発しており、積極的な印象を受けます。

今回はメガバンクの取り組みを紹介しましたが、本来デジタルの取り組みは資本力がなくとも導入でき、変革を伴うために柔軟な組織ほど導入がしやすいという側面があります。地銀やネット銀行、ベンチャー企業がメガバンクを凌駕する可能性も秘めており、その環境の変化に取り残されないよう各行注力をしている様子がうかがえます。

どのプレイヤーが新しい時代のスタンダードとなるのか。金融は今後最も変容する業界の一つであり、これからもますます目が離せません。