アパレル各社のEC戦略とEC化率(2/3)-ワールド・オンワード

アパレルECの雄が、体のサイズをくまなく測定することができる「ZOZO SUIT」を発表し、話題となりました。発送が遅れているようですが、ZOZOの予想を上回る注文があったことを感じさせます。

「体のサイズ」という、他社が持たない貴重なデータを収集することで、様々な可能性が広がります。体にフィットする服が自動的に届けられるようなサービスが提供されれば、ファッションにそれほど興味のない人たちの多くは、ZOZOから服を買うようになるかもしれません。当然、他ファッション企業からすれば、今回の「ZOZO SUIT」は「脅威」以外の何物でもないでしょう。

さて、前回に引き続き、アパレル企業がEC戦略をどのように考えているのか取りまとめていきます。今回は、百貨店ブランドをメインに扱う企業のEC戦略を見てみます。

他の企業の記事はこちら
第1回:アダストリア・ベイクルーズ・TSI・UAの売上・EC化率の推移と施策まとめ
第3回:PAL・三陽商会・レナウンの売上・EC化率の推移と施策まとめ

 

各社の戦略と取り組み

百貨店ブランド

売上高とEC化率のマッピング(再掲)

ワールド

売上高:2,575億円
EC売上:169億円
EC化率:6.6%
(2017年3月期)

ワールドは、今回取り上げる企業のうち、売上高が最も大きい企業です。売上はここ数年下降傾向にありますが、大規模リストラや店舗閉鎖により、営業利益は2015年3月期の50億円から2017年3月期の144億円へとV字回復を果たしています。

危機にあるアパレル、ワールドをV字回復させた再生請負人の手法|Net IB News

2014年3月期、2016年3月期は、EC売上を含む全売上を表示 (出所:企業HP、日本経済新聞社、通販新聞社)

2015年末には、ECサイトを全面刷新しました。ZOZOTOWNと似たデザインとなっており、ECで既に結果を残しているサイトをベンチマークにしながら改善を行ったのだろうと思われます。結果としても、2週間のテスト運営期間では、売上高は前年同期比30%増、中でもプロパー(定価)品が同50%増という数値をマークしており、ユーザーからは好意的に受け止められています。

ワールド、自社通販サイトを全面刷新、動画活用にも着手へ|通販新聞

左:ワールド 右:ZOZOTOWN

また日経新聞によると、ブランドごとにEC担当者を設けたとのこと。サイトのみならず、組織的にもECに注力した結果が、2017年3月期のEC売上拡大に繋がったと思われます。

アパレル5社のネット通販、売り上げ4年で2倍|日本経済新聞

さらに直近では、ITコンサルタント会社のフューチャーと共同出資し、商品の生産からEC運営、店舗運営などの事業ノウハウを他社に供給する新会社を設立しています。

ファッション企業とテック企業が協力する事例といえば、ユニクロとアクセンチュアの協業が有名です。ユニクロの事例ではユニクロ自身の強化を目的としていますが、ワールドの事例では狭義のファッションではなく、コスメやインテリアなど、広義のファッション業界に自社ノウハウを提供することを目的としており、ワールドとしての事業領域の拡大も目論んだ協業と言えそうです。

ワールドがITコンサルと新会社 店舗運営ノウハウなど外販|神戸新聞

株式会社 ファステック・アンド・ソリューションズ

ワールドは、ECに早期注力した企業と比べると売上の規模はまだまだですが、元々の売上や顧客数から考えると、EC売上の伸び代は大きいと考えられます。非上場企業であるため限られた情報ではありますが、適切にECに投資・注力している様子も見てとれ、今後より一層EC売上が拡大していく期待が持てる企業です。

オンワード

売上高:2,546億円
EC売上:150億円
EC化率:5.9%
(2017年2月期、海外売上含む)

ワールド同様、百貨店ブランドをメインに取り扱うオンワードは、売上・営業利益率が共に微減傾向にあります。ここ数年はEC売上を伸ばしており、2018年2月期の第2四半期では、売上が低下していることも相まってEC化率は8.5%まで伸びています。2018年2月期通期でのEC売上は197億円を予想しており、EC化率も10%を超える勢いです。

上記グラフは国内のみ。*2012年~2015年はEC売上を含む全売上を表示 (出所:IR資料)

オンワードが2016年4月に発表した中期経営計画では、2019年2月期までにEC売上を国内310億円、海外50億円まで引き上げ、EC化率は12%を目標とすることが掲げられています。目標達成に向けて、2016年には自社/他社EC間での在庫データ連動などの基本機能強化に加え、EC専業ブランドを展開するティアクラッセ社の買収しノウハウを取得する等の施策を既に実施しています。

メインの自社EC強化だけではなく、2016年末には食のEC「オンワードマルシェ」を開設、2017年10月にはシャツに特化したEC専売の新ブランド「THE T.I.E」をローンチ、同じく10月に、ECからオーダーメードスーツを購入できる新ブランド「KASHIYAMA the Smart Tailor」を立ち上げるなど、ECにおける新サービスを積極的に展開しています。

オンワードがEC専売のシャツブランドを始動 「五大陸」がプロデュース|WWD

オンワード、オムニチャネルのオーダーメイドスーツ事業をスタート|ネットショップ担当者フォーラム

左:THE T.I.E 右:KASHIYAMA the Smart Tailor

にわかに盛り上がる「オーダースーツ」のWEB注文サービス

店舗で採寸し、2回目以降の購入をWEBで行う「オーダーメイドスーツ」サービスは、紳士服のコナカや、スタートアップ企業も手掛けており、どの企業が勝ち抜くのか、動向が気になります。

コナカのDIFFERENCEは、佐藤可士和氏がプロデュースを行っており、従来のコナカのイメージとは異なる洗練されたサイトが印象的です。売れ行きは好調のようで、2016年10月のオープンから店舗数を伸ばし続けています。

LaFabricはスタートアップが手掛けるオーダースーツブランドで、DIFFERENCEやKASHIYAMA the Smart Tailorと比べ、やや割高ながら質にこだわった商品を出品しています。2017年10月には総額約7.4億円の資金を調達しており、更なる拡大が予想されます。

左:DIFFERENCE 右:LaFabric

佐藤可士和がオーダーメイドのスーツを選ぶ理由 コナカを前進させた社長とのやりとり|BuzzFeedNEWS
オーダースーツブランド「DIFFERENCE」新たに23店舗をオープン|PR TIMES
スーツをネットオーダーできる「LaFabric」が7.4億円の資金調達|CNET JAPAN

DIFFERENCE
LaFabric

各サービスとも、採寸が起点になるので、いかに多くのユーザーに採寸をしてもらうかがカギとなります。紹介したDIFFERENCEとLaFabricは、採寸の際に店舗に来店することが必須となりますが、オンワードが手掛けるKASHIYAMA the Smart Tailorは、自宅などへの訪問採寸も可能です。ユーザーが自宅に来てもらってまで採寸をするかどうかはわかりませんが、上手く機能すれば類似サービスをリードする存在となれるかもしれません。

まとめ

ここまで、百貨店ブランドをメインに扱う、ワールドとオンワードのEC戦略、さらにはオーダースーツをECで注文するサービスの現状をお伝えしました。現時点では、企業規模や競合と比較すると、ECの売上は低いことは事実です。両社とも、百貨店ビジネスの好調時には店舗やブランドの拡大に投資していたため、いざ百貨店ビジネスが落ち込んだ時には立て直しで精一杯となり、ECに本格投資する余力がなかったことが、その要因ではないでしょうか。

現在は両社とも積極的にECに関わる取り組みを行い、積極投資しているようですが、サイト・アプリのUI/UXなど基本的な部分では、先行する企業とはまだまだ差があると感じます。他企業に追いつき、あるいは追い抜くためには、より本腰を入れてECに取り組む必要があるでしょう。

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