スポーツ×デジタル(1) – Jリーグのデジタル推進

2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることもあり、ここ数年日本ではスポーツビジネスにまつわる議論が活発に行われています。本特集ではスポーツ分野でのデジタル活用を中心に、現在スポーツビジネスで起きている事や、課題などを取り上げていきます。第1回は日本のプロサッカーリーグであるJリーグの取り組みについて、見ていきたいと思います。 

Jリーグの現状|25年を終えたJリーグのビジネス

12月2日(土)にJ1リーグの最終節が、翌日の12月3日(日)にはJ2リーグのJ1昇格プレーオフの決勝戦とJ3リーグの最終節が行われ、2017年のJリーグの全日程が終了しました。今年のJリーグは1993年の開幕から数えて25年目のシーズンでした。Jリーグが出来てからこの25年で全国に54のクラブができ、W杯へは6大会連続で出場するようになるなど文化面、競技面で着実に成果を出してきました。

一方で経営面はどうでしょうか。以下は主要国における営業収益です。ヨーロッパの強豪国と比較し、日本は大きく後れを取っていることがわかります。

主要各国の営業収益 (単位:億円)

(出典|『JリーグPUBレポート2016 SUMMER』)

この状態が続くと「良い選手が獲得できない」、「ファンの観戦体験を高めるような様々な投資ができない」といった状態になり、リーグ全体として魅力を失っていく恐れがあります。持続的に日本サッカーを成長させていくためにはビジネス面での成長も不可欠です。

こうした状況の中で、Jリーグは成長を実現するために、2015年から重要戦略として以下の5つを掲げています。

Jリーグが掲げる「5つの重要戦略」

1.魅力的なフットボールの提供
2.デジタル技術の活用推進
3.スタジアムを核とした地域再生
4.アジア戦略
5.経営人材の育成

この中でも特に動きが活発なのが「2.デジタル技術の活用推進」の分野です。

Jリーグの取り組み|クラブチームを横断した共通基盤の導入

平均観客動員数が殆ど横ばいの状態にあるJリーグにおいてファン拡大は喫緊の課題です。

これまで多くのクラブでは顧客管理を統合的に行えておらず、チケット購入者とグッズ購入者、ファンクラブ会員がそれぞれバラバラで管理されていました。試合の招待客などはデータが取れておらず、どのような人が来ていたかも分からなければ、再来場を促す施策も出来ていないクラブチームもありました。

そのような中で、2016年にJリーグは共通基盤を導入しました。これまでも一部のクラブチームでは顧客データの活用を行っていましたが、共通基盤の導入により多くのクラブで顧客データが活用されるようになりました。そして、「Jリーグはコアなファンが多い」、「新規ファンが少ない」という大きなくくりで議論してきたことが、データとして顧客それぞれの属性が可視化されるようになり、年間約20試合行われるホームゲームにてPDCAを回せる環境が整いました。結果、ここ数年でデータを活用したマーケティングに取り組むクラブが増えてきています。

クラブチームの取り組み①|ライト層の囲い込みを行った横浜F・マリノス

横浜F・マリノスはJリーグの中では常に平均観客動員数が上位に位置しているクラブチームです。2017年シーズンもJリーグの中で3番目に多い24,766名でした。しかし72,327名を収容できる日産スタジアムがホームスタジアムのため、半分以上が空席になっており、てこ入れが必要な状況です。

2年前の2015年シーズンが終わった際、横浜マリノスのスタッフ永井氏は以下のように述べています。

F・マリノスに関心があるけど、お金を払ってまでファンクラブ会員になるつもりはないよ、というライト層の人たちをどうも取り込めていないのではないか。それが2015シーズンを終えて出した仮説です

実際マリノスは、平均観戦頻度が9.8回とJ1のクラブの中で2番目に低く、1年間の最大動員試合と最少動員試合の差が25,810(2017シーズン最大:6/4川崎戦 42,483名、最少:6/25神戸戦16,673名)と大きく、永井氏の言う通りコアだけでなくライト層も一定数いることが推測されます。

その後マリノスは無料会員を組織化した上で、グッズのプレゼント企画などを行い、会員数を伸ばしました。またその会員に対して、取得した属性や購買行動などのデータに基づいたアプローチを行いました。その結果、無料会員から有料会員にアップグレードする例も多く出てきています。

日本最大の競技場を満員に。マリノス、ビッグクラブへの命題 |NewsPicks

クラブチームの取り組み②|コアが仲間と集う浦和レッズのデジタル戦略

今年10年ぶりのAFCアジアチャンピオンズリーグ(以下ACL)制覇を成し遂げた浦和レッズは、毎年Jリーグでトップの観客動員数を誇り、2017年シーズンの平均観客動員数も2位のFC東京に7,000人以上の差をつける33,542名で断トツの1位でした。

スタジアムで試合を観戦したことのある人は分かるかと思いますが、浦和レッズの特徴は何と言ってもサポーターの熱量です。平均観戦頻度がJ1で断トツ1位の18.1回とコアなサポーターを多く抱えているクラブです。また平均同伴者数も断トツ1位の5名(J1平均は2.8名)。友人とスタジアムに来る割合も62.5%(J1平均31.6%)とこちらも断トツの1位です。

そんな浦和レッズは2015年シーズンよりCRMを導入し、REX CLUBという会員組織の運用を開始しました。REX POINTというポイントプログラムも導入され、チケットの購入やスタジアム来場、グッズや飲食の購入でポイントが溜まり、溜まったポイントをオリジナルグッズと交換することができるようになりました。これによりあらゆる顧客のデータを取得することができるようになりました。

また浦和レッズは、友人と試合を観に来る人が多いという特徴を活かし、REX CLUB会員が友人を誘って来場するとポイントが溜まるという施策も行っています。10/18(水)に行われたACL準決勝 第2戦 上海上港戦では「総力結集ポイント」と題し、浦和が決勝進出を果たした場合には来場者にポイントが付与され、ポイントは来場者が多いほど多くなるという施策が行われました。

Fan-Life Platform 導入事例 浦和レッドダイヤモンズ株式会社様

【REX CLUB】10/18(水)上海上港戦は 仲間を誘って「総力結集ポイント」をゲット!!

このように各クラブが本格的にデータ活用を始めてからまだ数年しか経っていないものの、徐々に効果が出てきているクラブもあるため、今後の展開が楽しみです。第2回はプロ野球の事例を見ていきたいと思います。

<参考>Jリーグスタジアム観戦者調査2016