特集:スポーツ×デジタル(3) Bリーグのデジタル推進

これまでJリーグプロ野球の取り組みを取り上げてきました。最終となる第3回では、2016年に発足したプロバスケットリーグ Bリーグの取り組みをご紹介します。

Bリーグの誕生と成長|開幕1年目の観客動員数が前年比50%増

Bリーグは2016年9月にそれまで国内に存在していた2つのリーグを統合する形で発足しました。Bリーグの特色は、観客動員数重視の徹底にあります。もちろん他のプロスポーツも観客動員数を重視していますが、Bリーグの場合は、観客動員数を基準にリーグからクラブへの分配金を決定するほど徹底しています。一般的には競技成績によって分配金を決めますが、収益の源泉となる観客動員数を基準に分配金を決めることで、各クラブが集客面で切磋琢磨するように促しています。

また、LEDコートなどの華々しい演出の開幕戦が注目を集めましたが、リーグがデジタル戦略を主導することで高い成長を記録しています。Bリーグ開幕初年度の観客動員数は、開幕前の15-16年シーズンと比較して、B1リーグで50%増、B2リーグでも33%増と大きく成長しています。

 

出典:Monthly Marketing Report  #6 (2016-17シーズン)|B.LEAGUE

そして今年は、2年目のシーズンを迎えて約3か月が経過しましたが、9月から11月までの観客動員数は前年比で5%増。華々しく開幕した1年目の観客を取り込みつつ、着実に観客動員数を伸ばしています。

出典:Monthly Marketing Report  #2 (2017-18シーズン)|B.LEAGUE

 

Bリーグが描く今後の成長とデジタル戦略

着実に成長を続けるBリーグですが、2020年には年間の観客動員数300万人を目標に掲げています。2016-17シーズンは年間の観客動員数は226万人なので、毎年10%の成長が必要です。

<2020年観客動員数300万達成に向けた成長イメージ>

(2016-17シーズン実績をもとにDigital Business Blogが作成)

Bリーグでは、観客動員数を伸ばすために開幕時からデジタルマーケティングに力を入れています。特に若年層のファン獲得を意識して、スマホを重視した様々な施策を実行しています。

開幕時から公式アプリ「Bリーグスマホチケット」を立ち上げ、チケットの購入から試合当日の入場までを全てスマホで完結できるようにしました。

ユーザーはスマホで購入から入場まで完結でき、一緒に購入した友達のチケットをLINEで共有する仕組みもあるので、非常に便利です。また、クラブ・リーグ側は、第2回で取り上げたベイスターズの「ベイチケ」と同様、チケット購入者のデータを取得することができます。

例えば、2017年5月27日に行われたBリーグ初代王者を決める戦い「B.LEAGUE FINAL 2016-17」では、女性比率が53.2%と、半数を超えていました。また年代別にみると特に20代、30代の女性が多いことが分かりました。プロスポーツでは非常に珍しいことです。

「B.LEAGUE FINAL 2016-17」反響・チケット購入者の属性レポート|B.LEAGUE

こうしたデータを取れるようになると、そのコアターゲットに向かって、「こうしたら観戦回数が増える」、「このような施策を行えば友達を誘ってくれる」という仮説を立てたプロモーションが可能になります。また実際の来場データを用いることで、担当者間での議論がかみ合い、繰り返していくことで精度も上がります。

20代、30代のライトファンの女性向けであれば、「身につけたくなるおしゃれなグッズをつくる」、「友達と来場の記念に写真を撮ってSNSでシェアしたくなるスポットをアリーナに沢山用意する」など、試合以外での施策を充実させることも考えられます。またこれらの施策は、データで効果測定を行うことも可能です。

Bリーグの取り組み|クラブのデジタル推進をサポート

BリーグにはMOP(マネジメント&オペレーションプラットフォーム)というクラブの経営課題の解決を支援する組織があり、デジタル領域もサポートしています。MOPはNBAにあるTMBO(チームマーケティング&ビジネスオペレーションズ)というクラブの経営支援を行う組織を参考につくられました。

MOPは各クラブのチケットやスポンサーセールスの領域で支援を行っており、要望のあったクラブに対して分析をしてフィードバックを行っています。このような取り組みは日本国内のプロスポーツでは行われたことはなく、Bリーグが始めた新たな取り組みといえます。

リーグ主導でデータを取れる仕組みを構築しても、最終的にクラブがデータを活用できなければ、全体の観客動員目標は達成できません。一方でクラブは限られたリソースの中で運営を行っているため、なかなかデータを活用した施策を行えない場合があります。そのような場合にMOPが要望のあったクラブをサポートし、クラブのデータ活用を推進していきます。

こうしたリーグが行うクラブ支援があれば、全体の底上げにつながり、ひいてはリーグの発展につながっていきます。データを取れる仕組みを作るだけでなく、その後のフォローまでしている結果が、2年目になっても観客動員数の増加を続けている理由だと言えます。

スポーツを跨いだデジタル推進の可能性

Bリーグは国内プロスポーツでは後発組だからこそ、他のスポーツの成功事例を上手く取り入れたリーグ制度を構築できました。反対にBリーグの取り組みがプロ野球やJリーグに刺激を与えていく流れも出てきています。種目の異なるスポーツ同士は、競合する関係ではなく共存する関係になれます。普段Jリーグを観ていた人が、平日にプロ野球を観るようになり、シーズンオフはBリーグを観に行くようになる、こういったことは現実に各地で起きてきています。こうした層をより多く取り込むために、スポーツを跨いで顧客データの活用が可能になれば、スポーツ界全体の更なる成長が期待できるでしょう。

[参考]

リーグ売上10倍増。Bリーグを牽引する葦原一正氏が挑戦する日本スポーツビジネス革命|HIP

プロバスケ「Bリーグ」2年目に直面する正念場 観客数300万人に向けた展望をトップが語る|東洋経済ONLINE

B.LEAGUE、デジタルマーケティング施策も開幕へ [前編]――見えてきたリアルな課題|Insight for D

観客数最少の京都ハンナリーズを救え!Bリーグが進めるクラブ支援策「MOP」|Sports navi