アメリカにおけるライドシェアの現状整理

スキャンダルに端を発したCEOの交代、ソフトバンクからの出資など、話題に事欠かないUBERですが、日本においてはタクシー業界の力が強く、まだ浸透しているとは言えない状況です。ソフトバンクからの出資を機に、日本も重点展開地域となり、タクシー業界とは協調路線を敷くこととなりました。

一方アメリカでは、ライドシェアがタクシー(イエローキャブ)よりも多く利用され、交通におけるインフラとなりつつあります。アメリカにおけるUBER/Lyftなどのライドシェアサービスの現状を整理・シェアします。

アメリカでは、ライドシェアが交通インフラに

筆者が2018年1月に開催されたCES(Consumer Electronics Show)に参加してきました。その際、決済が簡単でタクシーよりも安いということで、ほとんどの移動をUBER/Lyftで行いました。東京でUBERを利用すると、乗車までしばらく時間がかかる印象ですが、CESが開催されたラスベガスやサンフランシスコにおいては、ほぼ5分以内に乗車することができました。(イベント会場など、乗客が集中する場合は除きます。)

以下は、ニューヨークのタクシー、UBER、Lyftの乗車数に関するデータです。乗車数の推移をみると、2017年7月には、UBERの1日当たり乗車数がタクシーの乗車数を上回っています。さらに、2017年11月(最新データ)におけるUBER/Lyftを合算した乗車数は全乗車の約58%となり、過半数を超えました。

出所:Todd W. Schneider

また、サンフランシスコのJETROに訪問した際にも「米国における車での移動時の割合は、ライドシェア63%、レンタカー29%、タクシー8%とライドシェアが過半数を超えている(金額ベース)」という調査結果も共有いただきました。

さらに空港では、ライドシェア専用の乗降場所も設けられています。

ライドシェア専用の乗降場所が設けられている(右下) 出所:THE VERGERS’GUILD OF THE EPISCOPAL CHURCH

日本で過ごしていると気付きませんが、ライドシェアは想像以上に交通のインフラへと成長していることが実感できました。

ライドシェアは、労働の機会も提供していることを実感

日本でタクシー運転手となるためには第二種運転免許の取得が必要となります。一方で、UBERは登録も非常に簡易です。そのため、様々なバックグラウンドの方たちが、UBER/Lyftのドライバーとして収入を得ることが可能です。

乗車したドライバーにヒアリングした限りでも、以下のような方がUBER/Lyftの運転手として働いていました。

  • アメリカの大学に通う娘の学費を稼ぐ、アジア系のお母さん
  • 子供たちをアメリカの学校に入れるために渡米し、ドライバーと工事現場で稼ぐミャンマー人のお父さん
  • 起業するも上手くいかず、開発と並行して当面の資金を稼ぐ博士課程卒の青年
UBER登録フロー(出所:UBERサイト

UBERのホームページには「好きな時に働き、やりたいことを実現しよう」というメッセージと、様々な事例が記載してあります。これは決してきれい事ではなく、実際に多くの人生をサポートしていることも、ドライバーへのヒアリングから感じることができました。

「通勤ライドシェア」も盛り上がる

上記の通り、UBERやLyftは多くのユーザーに利用されており、市民権を得たと言っても良いでしょう。盛り上がりをみせるライドシェア市場において、ルート・用途を限定することで差別化/低価格化を図るのが、「通勤ライドシェア」サービスです。

サンフランシスコを拠点とする通勤用ライドシェア「Chariot」は2014年に設立され、2016年にFord社が買収した企業です。チケットを購入し座席を予約できるバスのようなサービスで、アメリカの5都市(San Francisco, Austin, Seattle, Columbus and New York)に続き、2018年2月にはロンドンにも展開しています。

日本語の乗車レポートは、日本でライドシェア事業を展開する「notteco」のブログに詳しく載っています。是非ご参照ください。

超快適と言うわけではないですが、バスや電車だと混雑していて移動中何もできなかったりする一方で、Chariotを使うと事前に席を確保できるので楽だと言っていました。
通勤のライドシェア!Ford社に買収されたChariotに乗ってきた|notteco News

また、自転車のライドシェアも徐々に拡大してきています。アメリカでは多くの自転車ライドシェアサービスが資金調達を行っています。

サービス名 調達額
Spin $8 million
Social Bicycles $7 million
Zagster $10 million
LimeBike $12 million

出所:Tech Crunch

サンフランシスコでは、Ford社のGoBikeをよく見かけた

低コストのライドシェアサービスが増え利便性が向上すると、バスやタクシーといった既存の移動手段はコスト・利便性の両面で優位性が崩れてきたと感じます。

さらに、CES(consumer electronics show)でTOYOTAは「モビリティーサービス企業を目指す」とし、「e-Pallet」というモビリティー車両を発表しました。コンセプト動画では、前述した通勤ライドシェアだけではなく、荷物の配送、店舗の移動などが用途として想定されています。TOYOTAが描く世界が実現すれば、バスやタクシーは不要になるかもしれません。

アメリカにおいては、今やライドシェアが当たり前となりました。日本でも近い将来、ライドシェアが当然の社会が訪れるでしょう。

トヨタは交通サービスの未来を提示しましたが、バス会社やタクシー会社も同様に、どんな移動手段・移動体験を提供すると顧客の利便性が高まるのか、改めて検討しなければならないでしょう。