アリババのスーパーはここまで凄い|盒馬鮮生

盒馬鮮生

O2O(Online to Offline)のさらに進んだものとして、最近ではOMO(Online Merges Offline)という言葉をよく耳にするようになりました。O2OとOMOは何が違うのか。このスーパーを知ると、その違いがわかる気がします。

アリババが資本を入れるこのスーパー、なんとオンラインで注文すると送料無料で30分以内に配達し、ECによる注文の割合が7割に達します。その「盒馬鮮生(ファーマーションシェン)」についてご紹介します。

 <目次>

  • 盒馬鮮生とはどんなところ?
  • こんなところが凄い!
  • アリババにとっての意義とは
  • 競合テンセントの動向
  • 最後に

盒馬鮮生とはどんなところ?

(筆者撮影、注記ない場合は以下同じ)

視察した「盒馬鮮生」は、深圳のデパートの地下1階に店を構えます。さながら品揃え豊富な高級スーパーで、商品はどれも新鮮で綺麗に陳列されていました。

魚介類が豊富に揃い、どれも生きたまま生け簀に入れられています。ここまでは普通のスーパーですが、店内にはタブレット端末を凝視する多数のスタッフがいます。

そう、彼らはオンラインでの注文を待っているのです。注文があるとスタッフが手早くバッグに入れ、ベルトコンベアに乗せていきます。以下の動画がわかりやすいです。


(視察を同行した方のYouTubeを埋め込み)

画像でおさらいします。ECに注文があると、以下のようなバックに商品が入れられます。先ほどの海鮮であれば、水槽のようなケースに生きたまま収められます。

そしてバッグは常時動いているコンベアに乗せられ、店舗の天井を伝っていきます。

 

ひっきりなしに吊り下げられるので、とてもインパクトがあります。子供たちが追いかけていました。

そしてバックヤードへと吸い込まれていきます。

地下から地上階へと持ち上げられ、ローラーコンベヤで配達員のところへと送られます。

何人ものスタッフが待ち構えています。

歩道には多数の配達用電動自転車が停められていました。専門スタッフが半径3km以内であれば30分以内に届けます。

ちなみに、こちらが注文するアプリ。生鮮食品であっても個々にタグが付けられているので、店内にいればその場でスキャンしアプリのカートに入れられます。すぐに必要のない重い商品などは、自宅に配送することができますね。

そしてアプリでは、魚介類1つであっても産地から店舗に届くまでの全履歴が確認でき安全性に配慮しています。それだけでなく動画レシピが掲載され、必要な素材や調味料なども一括で購入できるというからとても便利です。

商品をその場で購入する場合、支払いは現金、クレジットカードなど不可でアリペイのみ。絶大なる普及率であるものの、競合のWeChat Payは利用できません。

一度店舗で買うと、質の高さと新鮮さに安心してECでリピートすることが多いそうです。特に働く若い女性に人気とのこと。なお、アプリユーザーは平均で毎月4.5回の買い物をしています。

結果としてEC化率が驚異の7割に達します。そんな割合、聞いたことありません。

こんなところが凄い!

一部重複しますが、改めてこのスーパーの凄さをリストアップします。

  • 商品1点でも送料無料で、30分以内に自宅配送
  • EC・店舗利用それぞれで最適化したアプリ(UIが自動で変わる)
  • 商品は毎日入れ替え、いつでも新鮮で安い
    (商品構成はAIで最適化、生産者と直取引でコストダウン)
  • 注文から10分以内に発送するオペレーションと配達人員
  • 全ての食材をその場で調理してくれる、しかも安い

上記を実現できるのは、アリババで培った生産者とのネットワークや在庫スペースを置かずに店舗の棚をそのまま倉庫にする(しかもタグで在庫管理)などの物流の最適化があってこそでしょう。実際に盒馬鮮生の延べ床面積あたりの売上高は、伝統的なスーパーの4倍近くまで効率化しているそうです。

さて、5つめの凄さとしてあげたレストランについても観察しました。午後5時前に撮影したものです。

以下ようなカウンターで調理を受け付けてくれます。加工賃は15元(約250円)なので、レストランより安いですね。

 

アリババにとっての意義とは

中国のネット通販市場は、アリババと京東の2社で合計8割強のシェアを占めます。ECの市場規模が今後も拡大するものの、オンラインによる取引は現在、中国全体の商業取引の15%ほどに過ぎません。

OMOスーパーはまさに高い成長を維持するためには必須のようです。

「“新⼩売事業”が売り上げ拡⼤に寄与している。⻑期的な成⻑を実現するためさらなる投資を続けていく」。23⽇に発表した18年4〜6⽉期決算でアリババのダニエル・チャン最⾼経営責任者(CEO)はこう述べた。(出所:日経新聞電子版 2018/8/27)

実際に当初2018年の出店計画を50店舗としていましたが、すでに65店舗を超えており、年内の目標を100店に上方修正したとのことでした。

CEOのジャック・マー氏は、オンラインとオフラインを融合した「ニューリテール」というコンセプトを掲げています。3つの戦略のうちの一つがこの、オフライン店舗のオンラインとの融合であり、もう一つがスーパーにて調理まで行ってくれるというものです。(残り一つは無人コンビニなどのテクノロジー)

競合テンセントの動向

さてWeChatを提供するテンセントもOMOスーパーに注力しています。それがこの「超級物種」です。

盒馬鮮生よりも少しこじんまりとしています。そしてだいぶ閑散としていました。ツアーガイドを務めてくれたホワイトホールの佐々木氏曰く、「盒馬鮮生に比べて、こちらは盛り上がっていない」とのこと。

そんな中、注力しているのがドローンによる配達です。広州の店舗ではすでにデリバリーが開始されており、ある特定の場所までドローンが配達し、その拠点からスタッフが自宅まで配達してくれます。

日本では楽天がドローン配送に参入しています。9/11現在では、あるゴルフ場の一ヵ所のみ受付時間も8時~15時のみのようです。(試験サービス中?)

こちらの超級物種では8/31に正式に開始されたとのことで、配達時間を40%~60%削減できるだけでなく、配達コストも半分に削減できるそうです。

最後に

今回の深圳視察で最も驚いたのは、このOMOスーパーでした。大きな資本と労力、そしてリスクを取らなければ、ここまでのものはできないと思います。それができたのは、中国という巨大なマーケットで上げた収益を先進的なサービスに徹底的に投資するという企業のスタンス、そして多数の配達要員を確保できる潤沢な人的リソースにあると思います。

いま中国の大都市ではどこでもモバイル決済が当たり前と言われています。モバイル決済がWeChat Payもしくはアリペイにほぼ統一されていることや、リープフロッグ現象といわれる新興国だったからこそ先進技術が受け入れられたこと、そしてドローンが気軽に飛ばせたり、電動モーターサイクルが歩道を走れるなど規制が緩いことなど複数の要素が重なっていることもまた、このようなサービスが成功した理由でしょう。

「日本はコンビニをはじめ十分便利だから、そういったものは普及しない」という話をしばしば聞きます。それだけでなく、国や人々が「よりよい状態になるんだ」という確固たる意志や活力が、中国にあって日本にないものではないかと感じました。

 

≪参考≫

  • アリババニューリテール戦略の全貌|Glo Tech Trends
  • アリババ、生鮮スーパー出店加速|日本経済新聞 電子版
  • イトーヨーカドー跡地でアリババのスーパーが大繁盛、その必然|日経XTECH
  • アマゾンの先を行く中国アリババ支援の「新型食品スーパー」|Forbes Japan
  • Amazonの先を行く食品スーパー「盒馬鮮生」|ONE HUNDREDTH