深圳ベンチャーの中心地はVC投資8兆円!|ソフトウェア産業基地

投資の規模、環境、そして人材と、これはもう敵わないなと思いました。そう痛感したのが深圳南山区にあるソフトウェアパーク(正式名称は南山ソフトウェア産業基地)を見学したときです。

BATといわれるバイドゥ、アリババ、テンセントもオフィスを構え、ベンチャー企業、ベンチャーキャピタル、アクセラレータなど300社以上の企業が入居します。

 <目次>

  • 南山ソフトウェア産業基地とは
  • 入居企業の特徴
  • エコシステム
  • そこで働く若者たち

南山ソフトウェア産業基地とは

(筆者撮影、注記ない場合は以下同じ)

南山区は、香港との国境の街である羅湖や福田より西に位置します。深圳市政府が主導し、このソフトウェアパークが完成したのは2015年6月。到着してまず目についたのが、このモニュメントです。「党と共に創業しよう」と書いており、近代的な景観の中に政治的な色合いを感じます。

深圳ソフトウェア産業基地の中心部を「深圳湾創業広場」といいますが、その広さは3.6万平方メートル、18棟のビルに300社以上が入居します。創業広場は、テンセントの本社とバイドゥの国際本部に挟まれ、すぐ北には深圳大学が位置します。

(出所:深圳湾技術開発有限公司)

深圳の特許出願数は目を見張るほどで、2016年の国際特許出願数は、深圳全体で1万9648件、うち南山区は1万389件に上ります。

入居企業の特徴

このソフトウェアパークには、ベンチャー企業、インキュベータ(アクセラレータ)、ベンチャーキャピタル、そして中国メガベンチャーのテンセントやバイドゥ、そして外資ではGoogleなどのオフィスがあります。

アクセラレータのひとつが以下の写真にあるStargeekです。こちらはハードウェア系のアクセラレータで、中にはメイカースペースのように3Dプリンターやレーザーカッターなどの工作機械があります。

入口の写真は、李克強首相が視察にきたときのものです。オープンした2015年、中国全土に「大衆創業、万衆創新」(大衆で起業し、万人でイノベーションを起こそう)と号令を掛けたのがまさに彼でした。なお、Stargeekについては、こちらのサイトに詳しく紹介されています。

「深圳在外研究メモ No.11 深圳市ソフトウェア産業基地(深圳湾)が意識⾼い編〜Tencent新社屋、Stargeek,NAVER, そして総理コーヒー。だいたいいつ⾏っても何
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そして深圳湾創業広場の南側には、ベンチャーキャピタルビルがあります。ここには多数のベンチャーキャピタルが入居します。

冒頭で国際特許出願数の多さを取り上げましたが、それを支援する弁護士事務所もあります。

ベンチャーとそれをサポートする各種企業が集まりますが、ただ一ヵ所に入居しているだけではありません。有機的につながっているのが深圳ソフトウェア産業基地の特徴です。

エコシステム

このソフトウェアパークは政府主導で極めて計画的に作られたことが、そのエコシステムから伺えます。

その1つの例が、ベンチャー企業に対する資金提供プロセスです。企業のステージによって、シード段階では約30のインキュベーター(アクセラレータ)が関与します。そして創業期には約100社のVC(ベンチャーキャピタル)が、さらにベンチャーとしての成熟期入ると、15の銀行や証券会社が資金を提供します。

タイトルにあるように、VCだけで投資規模が4,500億元(日本円で約8兆円)となります。それだけでなく、BATH(バイドゥ、アリババ、テンセントに加えファーウェイ)も重要な位置づけで、その莫大な資本力でベンチャー企業に出資やM&Aを行います。

また、施設にはオープンなピッチ/ロードショー(起業家が出資者にビジネスプランをプレゼンすること)を行う場所が複数あります。そのような場所やカフェにて、イベントやミートアップも頻繁に行われます。

さらに企業やプロダクトを紹介するメディアや、法律だけでなく会計、IT、経営管理をサポートするような組織も誘致されています。

また深圳には華強北といわれる秋葉原の30倍もある電気街や、xfactoryのようなメイカースペース(3Dプリンターなどが利用できるコワーキングスペース)、そしてSeeedのような3D CADファイルを送ると少量生産してくれるような企業があります。

それらを活用するとハードウェア系のアイデアであっても、すぐにプロトタイプを作ることができ、また短期間に機能や改善点をプロダクトに反映することができるのです。「深圳での1週間は、シリコンバレーの1ヵ月」と言われるほどのスピードで物事が進みます。

そこで働く若者たち

このソフトウェア産業基地には、全国各地から優秀かつ向上心溢れた若者たちが集まります。BATHに入れば、年収1,000万円以上もざらだそうです。例えばテンセントであれば、完全フレックスで時間の拘束はありませんが、皆夜遅くまで働きます。中国のIT企業の平均退社時刻は、21時50分ごろという調査結果があります。

でもそこに悲壮感はありません。それは効率を重視していて、意味のない資料作りや会議ではなく、無駄な残業だとは思わないからだそうです。

ちなみに、いま深圳の企業は、日本からの企業訪問を断ることが多いと言います。スーツを着た人々がぞろぞろ来て、ただ見るだけで帰っていったり、商談をしてもわざわざ日本に持って帰り決断に時間が掛かる。「なぜ意思決定者が来ないのか?」と疑問に思い、非効率だと感じています。

そして人材の流動性が非常に高く、BATH出身者がどんどん飛び出して自ら起業します。そのようにまた新たな価値が生まれます。最後にドローン企業DJIの創業者、フランク・ワン氏の言葉を紹介します。

苦悩なくして得られる成功など無く、PPTのみに頼って得られる富も無く、また天から降ってくるハイテクもない。卓越したものを追及するためには、無数の苦しく思索に耽る深夜を過ごし、72時間連続で働く執着心が必要であり、また真相を大声で言う勇気が必要だ。

(中略)ここには、妥協せず、洞察力に満ち、夢を持ち続ける人が集まる。我々はかたくなに実業を行って投機はせず、功利主義ではなく夢を信じる。(中略)

10年間、DJIは業界のトップに立ち、グローバルな空撮の新時代を切り開き、世界を改造する無限の可能性を示してきた。我々の経歴が証明するのは、駆け出しの若者が他者に迎合せず、日和見的に投機せず、ただまじめに物事を行えば、必ず成功できる、ということだ。

(出所:『週刊東洋経済』にDJI、そしてドローンについて寄稿しました。書き足りなかったこと。そして『中国ドローン産業報告書2017』出します|Aseiito.net)

片や日本では働き方改革という言葉を頻繁に耳にします。当然勤務時間や場所だけでなく、効率性もセットで語られているとは思いますが、多くの人が効率的に生き生きと働くためには、世界を変えたいという想いも必須のように感じました。

≪参考≫

  • 深圳湾創業広場について|深圳湾技術開発有限公司
  • 「深圳在外研究メモ No.11 深圳市ソフトウェア産業基地(深圳湾)が意識⾼い編〜Tencent新社屋、Stargeek,NAVER, そして総理コーヒー。だいたいいつ⾏っても何
    かやってる⾯⽩さ」への2件のフィードバック|Aseiito.net
  • 『週刊東洋経済』にDJI、そしてドローンについて寄稿しました。書き足りなかったこと。そして『中国ドローン産業報告書2017』出します|Aseiito.net
  • 曲がり角の中国経済が深センの若者を企業に駆り立てる|ダイアモンドオンライン
  • 中国に出現した「未来都市」深センで見た驚くべき光景|現代ビジネス
  • 日本以上のブラック労働でも悲壮感はない、中国のある事情|産経ニュース
  • BATHによるハイテク都市深センの人材エコシステムとは|ビヨンド
  • 深圳の1週間はシリコンバレーの1カ月|日経ビジネスオンライン